アントレプレナーシップ講演会
TOHO Today高校
6月24日に高2学年では、本校64期卒業生の廣瀬桂大さんをお迎えして、社会に出て働くということ、AIの時代にどのような価値を人間は生み出すことができるか、さらにアントレプレナーシップについて、講演をしていただきました。
以下は、講演内容の概略になります。
- 講演をする廣瀬桂大さん
皆さんがどんな仕事に就きたいのか、みなさんが働くのはそんな遠い先ではない。自分が将来働く姿を考え始める、さらには、急速に発展しているAIの時代に、人間ってどういう価値を生みだせるのか、そのためには学生時代、今日から何を培っていけばよいのかを考えるきっかけになって欲しい。
私は、小中高と桐朋で12年間過ごした。中高時代は部活8、勉強2ぐらいの生活を送っていた。好きな教科は数学と保健体育。特に保健体育では常にトップの成績を修めていた。
今も変わらないと思うが、高校1年生のときに、「私の将来」とう作文を書かされ、何を書いてよいかわからなかった自分は、担任の外堀先生(保健体育の先生)を見て、将来桐朋の保健体育の教員になって部活の顧問をしたいと書いた記憶がある。将来のことを考える暇もないくらい部活(サッカー)をやっていた。
4歳上に兄がいる。兄も桐朋を卒業し慶応大学に進学した。大学在学中にIT関連の会社を起業し、大学を中退、現在もその会社を経営している。自分も桐朋を卒業後慶応大学の理工学部に進学し、将来は兄と同じようにITで起業することを夢見ていた。自分が大学に入学した当時はまだガラケーの時代であり、同世代でのスマホ所持率は5%程度であったが、そんな中で兄はスマホ向けのアプリの開発をしていた。当時はこれからITの波が来るのだろうから、自分ももっとITに強い人間にならなければいけないと思っていた。そのため、大学2年に進級する際に、情報工学を専攻することにした。
このあと私の第1番目の転機が訪れる。大学3年生のときのインターンである。自分自身は兄と同じように起業しようと考えていたので、就職活動は考えていなかったが、母親に説得され就職活動をしてみることにした。幸いにも外資系の投資銀行でインターンをすることができた。ここで金融の世界にほれ込んでしまった。特に、トレーディングの世界にほれ込んでしまった。
インターン終了後、三菱UFJ銀行に就職することができた。当時、銀行では最初は必ず支店に配属され、社会人の基礎、金融の基礎を学ぶ。自分もある支店に配属され、営業を担当することになった。銀行の営業というのは、一般企業の営業とは大きく異なる。銀行にはプロダクトがない。お客様から融資のお願いがあれば、何の用途でいくら必要なのか、そのお金を使ったことでその企業がどのように成長する見込みがあり、そのお金を回収することができるのかをしっかりと調べ上げ、それを稟議書にまとめて提出をする。この審査が通って初めて融資が可能となる。お金が必要となる理由も企業ごとに異なる。まずはそれぞれの会社がどのように運営されているのかをしっかりと理解することが重要である。そういった意味で銀行員になるといろんな業種を担当することになるので、広く世の中を俯瞰することができる。そういった意味では銀行員はお薦めの仕事だ。
第2の転機が、銀行の中での次の異動である。人事部にお願いをしたかいがあり、トレーダーになることができた。トレーダーは、ものすごくやりがいのある仕事である一方、銀行に預けられたお金を扱うのであるから、その責任は重大である。トレーダーになると、朝4時くらいには起きて、寝ている間に動いているニューヨークマーケットをキャッチアップすることから始まり、夜寝るまでずっと相場に張り付き、1日1,000件とかのニュースを読むというのが日課である。
その後、トレーダー達にとっての大きな転換期となったのが、AIの台頭である。今は、トレーディング業務を人間が行っているが、将来的にAIに代替されるのではないかという話題が出されるようになった。そのため銀行の中で、AIを活用したトレーディングシステムの開発を行うことになった。トレーディングもわかり、かつコンピュータサイエンスにも詳しい者はいないかということで、自ら積極的に手を挙げ、そのプロジェクトにアサインしてもらった。このプロジェクトはスタンフォード大学と三菱UFJ銀行がタッグを組んで研究開発をするものであり、世界トップレベルの研究者たちと朝から晩まで膝を突き合せて議論したことは大変いい経験になった。
さらに金融業界全体を震撼させる転機が訪れた。それは他業界の企業が金融サービスを展開し始めたことだ。一部の報道では10年後には銀行はなくなっているのではないかというものもあった。そこで、銀行でも新規事業を立ち上げようということで、特に若手の行員(社員)の発想を生かすために、社内でビジネスコンテストが開催されるようになった。私自身もこのコンテストに参加し、当時グランプリをとって、実際にそれが事業化もした。
何か自分の身の回りで感じている、「これっておかしいよな」とか、「これってこのままでいいんだろうか」とかみたいなことを考えて、それを解決するためには、どういった施策があるのかを提案し、その提案したことによって周りを巻き込んで、みんなチームとして動いていくという、この力が今まさにいろんな業種、いろんな社会で求められている力になる。こういった力を培ってもらいたい。
文部科学省では、「様々な困難、変化に対して、与えられた環境のみならず、自らの枠を超えて行動し、新たな価値を生みだしていく精神」をアントレプレナーシップと定めている。私の兄のように起業をして新しいものを生み出していってもいいし、大きな会社に入ってその会社の中を変えていくという手段でもいい。このアントレプレナーシップというものをもって日々生活していく人が一人でも増えたら日本という国はもっと強くなっていくだろうと思っている。
では、どうやったらこのアントレプレナーシップを身につけることができるようになるのか。答えを待っていて、その答えを聞いて、「そうなんだふんふん」と信じるということではなく、何か答えらしきものを聞いたとしても「それって本当に正しいのか」と、まずは懐疑心をもつ。それがもしかしたら違うかもしれない。自分はこう思う、それを周りにぶつけてみてディスカッションするといったことがアントレプレナーシップを身につける上で大切なことだと思う。
この後、生徒からの質疑を受けました。その中でいくつか印象に残るものをあげます。
Q1 質疑応答が始まったのに、誰も手を挙げない。僕は不思議に思う。そういった人たちへのメッセージをお願いしたい。
A1 最初に手を挙げることは非常に勇気がいることである。アメリカの大学の講義形式だと、質問をしない、手を挙げないと評価が悪くなる。発言しない者はその場にいる資格なしと言われる。日本の社会も徐々に変わっていくと思う。手を挙げて発言することはすごく価値のあることである。
Q2 廣瀬さんは、いつアントレプレナーシップを身につけたか。
A2 高校生のころには到底身につけていたとはいえない。そういった意味では、もう一度高校生に戻ることができれば、もっとやれることはあったと思う。会社に入って、研究開発をしている人とかのサポートをしたときに、そこで新しいことを生み出すためには、自分で自分の既成の枠組み、自分の中にもっている常識を壊さないといけないということを強く感じた。今は、現状を壊して、変えていける人材が欲しいと会社で思われている。これからは、問いをたてる、実際に行動することが評価される時代になってきている。
Q3 自分の中の枠組みとか常識にとらわれないようにするときに大事なことは何か。
A3 懐疑心。これって本当にこのままでいいんだろうかとか、この方法しかないんだろうかとか、これが当たり前だっていう、それって自分が勝手にそう思い込んでしまってだけなんじゃないかって、自問自答してみる。それを自分の中で悶々と考えるのも最初はいいが、ある程度自分の意見がもてたら、身近な人にしゃべってみる。それに賛同が得られる場合もあれば、反論がでてくることもある。そうやって議論が活性化していくうちに自分の考えがまとまっていく(「壁打ち」という)。
会場での質疑応答を終えたあと、場所を変えて、30名近くの生徒が集まり、2時間近くの時間をかけて廣瀬さんに様々な質問が出されていました。廣瀬さんには、その一つ一つに対して、具体例や自分の経験を交えながら丁寧にお答えいただきました。
生徒たちは普段の授業とは大きく異なり、自分自身の将来を見つめる第一歩として、廣瀬さんの話を目を輝かせて聞いていました。廣瀬さん、ありがとうございました。




