TOHO Today - 教員ブログ -

2026年度 中学入学式が挙行されました

TOHO Today中学行事

さる4月8日(水)に中学入学式が行われ、86期中学1年生246名が入学しました。

 

以下に、原口校長から新入生に向け送られた「校長の言葉」をご紹介いたします。

 

ここ国立も桜をはじめ、春を彩るさまざまな花が咲き誇り、木々も柔らかに緑をまとう。まさに春爛漫といったことばがぴったりの、美しく色あざやかな景観となっています。

生命の輝きに充ちた本日、新入生の保護者の方々にご臨席を賜り、桐朋中学校の入学式を挙行できますことを大変うれしく、ありがたく感じております。

新入生のみなさん、入学おめでとう。中学生としての第一歩を踏み出しました。今、どんな気持ちですか。緊張とともに晴れやかさ、誇らしさを感じている諸君が多いことと思います。

保護者の皆様方、ご子息の桐朋中学校へのご入学、誠におめでとうございます。ご子息の健やかなるご成長に寄与すべく、第86期中1学年の教員ともども精一杯取り組んでまいります。何とぞ私たちの桐朋教育に温かいご理解とご支援を賜りますよう、高いところからではございますが、心よりお願いを申し上げます。

さて、新入生の皆さん。生物を研究する世界で最高の名誉とされ、その年を代表する革新的な研究をしたとして、イギリス動物行動研究協会が認定するティンバーゲン・レクチャー。その賞に昨年選出されたのが、鈴木俊貴さんです。

このティンバーゲン・レクチャー、1985年から毎年行われ、鈴木さん、歴代2番目の若さでの選出、さらにはアジア人で初めてという快挙を成し遂げています。

鈴木さんの研究については、きっと新入生のみなさんもご存知かと思いますが、鈴木さん、シジュウカラが言葉を話していることを解き明かしました。この研究が革新的であるのは、言葉を話すのは人間だけで、動物の鳴き声は感情の表れ、喜びや怒りなどを表現しているに過ぎないというこれまでの常識、古代ギリシャから現代までずっと常識だったのを覆す研究を、鈴木さんは成し遂げました。

常識にとらわれず、シジュウカラが言葉を持つとの考えを持てた土台に当たるものを、鈴木さんはこう説明しています。

「僕、本に書いてあること、多くは常識に当たるわけですが、それと、目の前で起きていることをそれぞれ分けて考えるという癖を身につけていて、それには、母の言葉が大きく影響しています。

僕が5歳の頃、庭にコガネグモが巣を張っていて、僕は毎日観察してたんです。そしたらある日、カブトムシが蜘蛛の巣に引っかかって、コガネグモに食べられていた。でも、子ども用の図鑑には、カブトムシは森の王者で、一番強い虫だから、誰にも負けないと書いてあったんです。

ビックリして僕、母にこう伝えました。『この図鑑に書いてあること、間違ってる』。すると、母はこう言ったんです。『それなら、図鑑を書き直したらいいじゃない』。

それ以来ぼくは、絶対的な存在だった図鑑に、自分が観察し気づいたことを書き加えるようになったんです。

人って、『図鑑は正しい』って思っちゃうでしょ。でも、間違っていることもあるし、何より、自分の目で見たものが正しいんだということを、その時に学んだんです。実際、誰もまだ発見していないことが自然界にはたくさんある。観察結果を書き留めていく中で、そういう認識を持つようになって、それがあったから、シジュウカラ語を発見できたのだと思います。

ぼくにとって今に繋がる大切な学びなんですが、母は『そんなこと、言ったっけ』という感じで、覚えてないのです」

新入生の皆さん。桐朋中学校が大切にしていることは、自主的態度を養うことです。自主的とはどんなことだと思いますか。自分の意思で、自分の力で取り組むことを意味します。

鈴木さんは、自分の目で見たものが正しいんだという観点から、自分が観察し気づいたことを絶対的存在だった図鑑に書き込み、自分にとって真に納得のいく、自分の図鑑を創り上げていきました。そして、この姿勢が革新的な研究へとつながったわけです。

鈴木さんの自主性は、こんな状況でも力を発揮します。シジュウカラが言葉を持つという研究は、誰もやったことないし、証明したこともないのですから、証明する方法は自分で作っていくしかありません。鈴木さん、こう話しています。

「研究してない時間も常に、頭の片隅では、今向き合っている研究課題のことを考えています。どうしたら証明できるか、それにつながるアイディアはないか。ずっと考えているから、何かのタイミングで『あっ、これ、あの実験に使えるかも!』と、アイデアが浮かんでくるのだと思います。

18年の間、それも、1年のうち長いと10ヶ月、短くても半年、ずっと森の中にいて研究してますから、最近は、鳥が何を考えているかを自分で理解できている感覚が強くなっていて、やっと思った通りの実験結果を手にできる確率が上がってきました」

「継続は、力なり」。そのエネルギーの源について、鈴木さん、こう語っています。

「鳥には個性がありますし、たまに予期せぬ行動を見せてくれることもある。そんな時、ワクワクしますね。長い時間、一人森の中にいて研究する。これ、好きでやっているからできちゃうし、ちっとも苦にならない。

また、研究結果が思い通りにいかなくても、それは失敗じゃなくて、発見なんです。だから、研究って、すごく面白い。

そんなこともあって、僕は研究のゴールを決めないと決めてるんです。最初にゴールを決めてしまうと、その時の僕が想像できるところまでしか、たどり着けない。そんな気もしてるんです。どこまで行けるか、わからないけど、その時その時、自分が一番ワクワクすることを続けていくと、もっとすごいことがわかってくるかもしれない。そう考えています」

みなさんもご存知だと思いますが、鈴木さんはこのキャンパスで過ごした先輩です。鈴木さんが中学生の時、校内の林である、みや林にいるクワガタを採ってきては、一匹一匹個体識別して、それぞれに名前を付けて観察するとともに、クラスメイトに見せてもいました。そのうちの数匹が一斉に逃げ出しても、すかさず捕まえ、クワガタの個体識別ができていたので、元いた所へちゃんと戻すこともしていました。

鳥の研究をスタートしたのも高1の時。双眼鏡を手に入れ、バード・ウォッチングをみや林でしていました。

また、以前、桐朋での講演会でこんなことも話してくれました。

「ぼくは、誰もやっていない面白い研究を、自分の力で成し遂げたいという思いを強く持っています。この思い、自主性を重んじる桐朋の教えを学んだからだと感じます。桐朋では、好きなことに打ち込めるし、互いの個性を尊重する環境がある。だから、ぼくは人間を特別視せず、小鳥も進化の過程で彼らに適した言葉を持っているはずという独創的な考え方を自然と持つことができました。

桐朋で自主的に取り組むことの魅力、大切さを学んでいたからこそ、世の常識に囚われず、自分が発見したシジュウカラの言葉を自分の力で証明してやろう。さらには、動物言語学という新たな学問分野の創設に挑戦しようという思いが生まれてきて、これまで研究を続けることができました」

桐朋中学校は、自主的態度を養うことに加え、他人を敬愛する、勤労を愛好することを教育の実践目標に掲げ、周りの人に敬意を払い、積極的に関わろうとする行動力を持つことを大切にしています。

鈴木さん、こんなことも話しています。

「研究する際、生き物を無理やり人間の世界に連れてきて、実験や研究をするというのではなく、生き物の世界に入っていき、彼らの視線で見るようにして調べたら、ちゃんと鳥たちにも言葉があった。他者を知る際、他者の視点に立って理解しようとするのが僕の始めた動物言語学なんです。同じように、人にもそれぞれいろんな世界があって、いろんな意見があります。他者を理解する点では動物言語学と同じ。他者の視点に立つと、共通点、相違点、両方を尊重し合うきっかけにもなるんです。だから、他者をちゃんとした形で観察し理解しようとするのって、人間社会においてもすごく大切です。多様な人々と共存し、より良い関係を築くための大切なアプローチとして、動物言語学の観点を社会に残せたらいいなあと思っています」

新入生のみなさん。みなさんがこれから過ごす中学・高校という時期は、自分の、さらには、今後の人生の土台となる部分を形作る大切な時期です。今日出逢った桐朋中学の教員、そして、何よりクラスメイトとともに、日々の学校生活や行事、クラブ活動に取り組む中で、他者の視点に立ってお互いを知り、自分自身への理解も深めていく。その中で、一人ひとりの個性を尊重し、それぞれの長所を活かし合うチームになる。そんな経験を重ねながら、みなさん一人ひとり、人生の土台をしっかりと築きあげてほしいと願っています。ぼくたち教員もみなさんを全力で支え、応援し続けます。

新入生のみなさん。改めまして入学おめでとう。中学校での生活を存分に楽しみ、充実した日々となるよう、お互い頑張りましょう。終わります。