TOHO Today 桐朋トゥデイ

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進路企画として毎年開催している医学部生との懇談会が、2月23日(日)に桐朋中高の多目的ラウンジで行われ、今回は、桐朋女子中高との合同開催となりました。参加した卒業生は、桐朋高OBが、筑波大・防衛医大・東京医科歯科大・東北大・大阪大・佐賀大・横浜市立大・順天堂大・日本医科大・埼玉医科大・福岡大から合計13名、桐朋女子高OGが、聖マリアンナ医科大の2名でした。在校生は、桐朋中高が、高校3年3名、高校2年7名、高校1年3名、中学3年8名、中学2年3名、中学1年3名の27名、桐朋女子中高からは、高校2年3名、中学3年3名の6名が参加しました。

最初に、医学部生からの話題として、桐朋高校卒業の医師・医学部生が大学の垣根を越えて交流できる場としての「桐朋医会」の活動が紹介され、医学部に進学したらぜひ入会してほしいと、勧誘がありました。

続いて、標準的な医学部のカリキュラムについて説明として、①医学だけでなく一般教養も学ぶこと、②基礎医学で、病気を理解する前提として、正常な状態での人体の構造や機能を学び、薬の作用についても細胞レベルで学習すること、③臨床医学で、病気をどう治すのかを学ぶことなどが紹介されました。その後、臨床実習があり、実際の患者と接しながら、医療についての理解を深めていくと説明がありました。臨床実習にあたり、医学部生に対して、医療行為を行える能力と適性の確認を目的として共用試験が行われていることや、医師免許取得後、初期研修病院を選ぶ際に、研修希望者と受け入れる病院とのマッチングに取り組むシステムがあること、さらに、医学部卒業後の進路として、開業医以外に、医学研究に取り組む研究医になる、厚生労働省などで行政の面から医療に関わるなど、さまざまな道があることなどが紹介されました。

次に、医学部の紹介として、東北大・東京医科歯科大学について、それぞれの医学部の特徴、魅力などに関する説明がありました。

東北大では、先生が、生徒とのインタラクティブな関係を大切にしていて、希望すれば大学1年生から研究のチャンスがあり、説明した医学部生は、自分でiPS細胞を育て、難病を治療する薬の研究に取り組んでいるとのお話でした。

東京医科歯科大学では、留学制度が充実していて、多くの学生が利用できること、ビッグデータを医療に活用する学部が2022年に新設されることなどを紹介してくれました。

次に、学習への取り組み方について説明がありました。

「勉強する目的として、三点あると思う。一つは、『学問に必要な能力を身につける』ことで、最も大切なのは、読解力・文章構成能力・実験解釈能力などの土台となる『論理的思考力』である。二つ目は、『考え方を応用する力を身につける』ことで、ある教科の学習を通して一つの考え方を学べば、それを他に適用し、理解や説明ができる。三つ目は『必要な基礎知識を身につける』ことで、公式や用語の習得だけでなく、考え方の根本やパターンを知識として身につけることが大事だ。

勉強の取り組み方として、例えば、授業を受ける際、単にノートを取るだけでなく、先生の話を自分で再現しながら、授業で先生が力説した理由を納得いくまで考えるなど、自分なりの工夫を加えることで理解は深まる。また、得た知識を体系的に身につけることが大事だ。知識を分類・階層化して整理したり、知識を、付随するもの、関連するものと組み合わせながら、ストーリーを作るようにして覚えたりすると、知識のネットワークができ、知識を活用できるようになる。こうした力を身につけるには、自分の興味のある教科をやり込んで、とことんまで極めておくことが有効だ。

『いろいろなことを教えてくれる先生がいる』『質問のしやすさを活かしてどんどん質問することで、質問の仕方を学べる』『競争関係を意識せずに議論し合える仲間がいる』という学校だからこその魅力をぜひ活用してほしい。

最後に、なにより『自分で考えて決める』ことが大切だ。本日の話をまねする必要はない。自分と向き合い、どう取り組むかをじっくりと考えて決断し、実行していってほしい」と話してくれました。

また、自分の勉強法を具体的に紹介してくれた先輩もいました。

「『入試の直前の10分をどう過ごすか』を考えた。そこで、試験などで自分が間違えた内容をしっかりと復習し、克服すると決めた。これこそが勉強だし、クラブ活動では、上達を目指して誰もがやっていることだが、勉強だとおろそかにしがちだと感じた。自分は、ミスしたことを一つ一つノートに記録し、常に見返していた。これを、入試直前の10分にも行った」

次に、参加した医学部生から各大学の紹介がありました。大学ごとにブースを設け、在校生は複数の大学の話を順に聞きました。和気藹々とした雰囲気の中で、卒業生から、各大学の特徴や魅力、進学を決めた理由、勉強法など多岐にわたる説明がありました。

大学紹介の途中に、昼食の時間も設けました。食事をしながら、医学部生と交流する在校生もたくさんいました。

医学生との交流の最後に、聴診器の使い方について学びました。最初に、心臓の構造と働きについて説明があり、

心音を聞く位置のレクチャーを受け、聴診器で心音を聞きました。

聴診器で聞く心音で、正常なときと異常があるときでの音の違い、医療行為における、聴診器で心音を聞く意義などについて、説明がありました。

次に、主として医学部生向けに、杏林大学医学教育学准教授の矢島知治先生から、「診療における頭の使い方」というテーマで講義が行われました。

「現病歴とは、今の病気がいつからどのように始まり、どういう経過を辿ったかを聴取するところから始まる。日本の医学教育では軽視される傾向があり、アメリカ人の指導医から、そのことを痛烈に批判されたことがある。基本に忠実な現病歴の取り方を、実践を通して確認したい」とお話があり、医学部生が医師役となり、矢島先生を患者役として、問診にチャレンジしました。

「50歳の女性が朝6時に救急外来に来た」という設定で、医師役の学生と患者役の矢島先生とのやりとりをホワイトボードに記録し、現病歴の確認を進めました。

現病歴の取り方で心がける点として「時経列に沿って情報収集を進めることが、診断の質も患者さんの満足度も高めることにつながる」というアドバイスがありました。

その後、腹痛をきたす疾患を列挙した上で、それぞれの疾患の症状がどう異なるのかに着目しながら問診の情報だけで疾患を絞り込む作業をした上で、画像所見も確認しました。

結果として、卵巣茎捻転という診断に至るまでの理詰めの思考プロセスを体験することができました。

最後に、新型コロナウイルス感染症についてもお話しいただきました。感染症を罹患した患者が何人の未感染者に感染させるかを示す「基本再生算数」が、麻疹では12~18であるのに対して、新型コロナウイルス感染症は2程度と言われ、一見感染力が弱そうに見える。しかし、麻疹は95%以上の人が抗体を保有しているので感染が広がらない一方で、新型コロナウイルス感染症は誰も抗体を持っていないため感染が拡大し続けることになる。それを少しでも防ぐために、濃厚接触の回避と手洗いをはじめとした予防行動を励行することが重要であるとお話しいただきました。

当日お越しいただいた、横浜市立みなと赤十字病院で救急外科部長をなさっている馬場裕之先生からは「臨床現場で症状を把握し、すぐに対処すべきかを判断する機会の多い外科においても、現病歴に関する矢島先生のお話は大切だ。また、人体には、教科書通りではない、さまざまなケースがあるので、思い込みで診断してはいけない。新型コロナウイルス感染症の話題もあったが、臨床現場に出たら手洗いは必須で、それを守れない人は現場に出てはいけない」とお話しいただきました。

後日、36ページに及ぶ冊子が参加した在校生に配られました。これは、今回参加してくれた医学部生たちが作成した物で、合格体験記・不合格体験記、学習アドバイスが盛り込まれています。

参加した生徒の感想です。

・医学部に興味があったので参加しました。各大学の具体的な雰囲気が感じることができました。特に、順天堂大学・東北大学に関心を持ちました。(高2)

・医師である父親に幼い頃から憧れていて、医師を志望しています。元々わかっていることですが、医学部は入学できる枠も限られているので、部活をしながらではありますが、今のうちから勉強を頑張らないといけないと改めて感じました。(高2)

・医学部志望なので参加しました。先輩方がフレンドリーに接してくださったので、気楽にさまざまなことを聞けましたし、話を聞いたどの大学も魅力的でした。(高2)

・医学部に興味があるので参加しました。改めて医学部に入ることの難しさを感じました。具体的なお話をさまざま聞くことができ、とても良かったです。特に、横浜市立大学は、医学部に関すること以外でも、自分が求めている条件がそろっていると感じました。(高1)

・将来、医学系も視野に入れているので、参加しました。お話を聞くと、どの大学にも良いところがあるなあと感じました。その中でも大阪大学に興味を持ちました。(中3)

・医学部に興味があったので参加しました。医学部の人は勉強しかしていないというイメージでしたが、先輩方は楽しそうな人ばかりで、ますます医学部に入りたいと思いました。入試は難関だと思いますが、大阪大学に魅力を感じました。(中3)

・医師志望と決めてはいないものの、医学に興味を持っていたので参加しました。医学部でどんな勉強をしているのか、医学部に入るためにどんな勉強をしたのかなど、詳しく教えていただきました。わかりやすい説明でしたし、先輩方のプレゼンもおもしろかったです。東北大学や筑波大学は、国公立で、最先端の研究ができる上に、留学の選択肢も幅広いと知り、興味を持ちました。また、矢島先生の特別講義では、患者さんを診断する上で重要なことや、現病歴についての知見が得られ、とても勉強になりました。(中3)

・中2で、このままで良いのかと考えるきっかけになると思い、参加しました。お話を聞き、このままじゃ自分はダメだと感じ、もっと勉強しようと思いました。やさしくいろいろなことを教えてもらい、ありがとうございました。興味を持ったのは東北大学です。研究が本格的にでき、留学もしやすいと感じました。(中2)

・大阪大学の受験勉強について聞きたくて参加しました。実際にお話を聞き、さらに行きたいと思うようになりました。また、留学が魅力的な東北大学にも興味を持ちました。もっと聞きたいことがあるので、これからもこの会を開催してほしいと思いました。(中1)

 

進路企画として行っている「大学で研究してみませんか」。
今回はスペシャル版として、高校入学試験後の休校を活用して2月12日(水)に竹中工務店東京本店を訪問しました。ご案内くださったのは、桐朋高等学校卒業で、竹中工務店木造・木質建築推進本部長の松崎裕之さんです。参加したのは、高校3年1名、高校2年2名、高校1年5名、中学3年3名、中学1年2名の合計13名です。
最初に、松崎さんからご挨拶をいただきました。その中で、竹中工務店で、桐朋女子高校卒業の方も含め、19人が働いていると教えていただき、説明でお世話になる、作業所でご活躍の中山尚之さん、技術研究開発部の松田耕さんをご紹介いただきました。
続いて、竹中工務店東京本店人事部の山岡沙織さんから、竹中工務店の施設のご案内、建物を作るプロジェクトの流れ(建築主のニーズと土地の特徴に応じた企画開発→デザイン・素材の意匠、設備、構造に関する設計→各種工事にあたる施工→メンテナンスなどアフターサービス)をご説明いただきました。

次に、現場で監督としてご活躍なさっている中山さんからご説明いただきました。

最初に自己紹介をしていただきました。中山さんは、桐朋中高卒業後、早稲田大学理工学部建築学科に進学、大学院を経て、竹中工務店に就職されました。
続いて、竹中工務店が建築した建物として、「『ドームの竹中』と言われるほど、国内のさまざまなドームを建築した。さらに、超高層ビルでは、あべのハルカス、新丸ビル、東京ミッドタウンなどを手がけている」と紹介いただきました。
中山さんのお仕事についてもご説明いただきました。
「組織としては作業所に属し、工事現場で現場監督員として指示を出す役割を担っている。主な仕事は、デスクワークとフィールドワークの二つに分かれる。デスクワークの一つに、設計図書の把握がある。工事は、設計事務所の建築士が描く設計図をもとに行うが、現場では、設計図を読み込み、より詳細な施工図を作る。他に、工事計画の立案、確認、工程表の作成などがある。フィールドワークでは、作業指示書通りに工事が進んでいるのかのチェックなどを含め、現場でさまざまにコミュニケーションを取りながら対応している。
建築の現場をサッカーチームに例えると、協力業者などが選手、現場監督員がマネージャーにあたる。マネージャーが個々の選手の個性を見極め、戦術を練るように、現場監督員による現場のコントロールが大切だ。
また、最近の現場は、VRやドローン、GPSを使ったナビゲーターの活用など、ICT化が進んでいる」
生徒からの質問として「傾きなど、複雑な形をした建物を建てる際に、鉄筋を組むにはどうするのか」などがありました。
次に、技術研究所に所属されている松田さんからご説明いただきました。
最初に自己紹介していただきました。桐朋中高を卒業後、東京大学に進学。大学ではソーラー建築の研究をし、大学院を経て、竹中工務店に就職したとのことです。

現在は、竹中技術研究所に所属されています。建設会社が技術研究所を持っているのは日本だけで、屋上緑化から宇宙空間での建築の検討まで、幅広く総合的な研究が行われ、千葉県印西市にある竹中工務店の研究所には、室内音場シミュレーターでのホール等における音の響きの研究、構造実験施設での地震の揺れなどへの強度の確認、耐火実験棟での耐火性能の確認などが行われているそうです。
松田さんが研究なさっている先端技術について、詳しくご紹介いただきました。
「先端技術部門には、ロボットやAIを研究している部署もあるが、自分は、建築現場の生産性向上に関わる研究をしている。『こんなシステムがあると便利だ』という現場の声があると、そのシステムを開発するという感じだ。これまで、鉄筋の組立に関する設計や施工で活用する三次元ソフトや、建築用の3Dプリンタの開発を行った。最近は、建築現場で建設中の建物内の位置を認識できるソフトの開発に取り組んだ。屋外ではGPSを活用して位置の把握はできるが、屋内ではGPSを活用しにくいので、ビーコンと呼ばれるBluetoothの小型発信器を活用して把握するシステムを作成した。これにより、建物内の人や物の位置が特定できるので、撮影した工事写真の位置の管理、現場での人や物の位置の把握、高所作業車の予約・配車管理などに活用している」
さらに、建築に必要とされる力についてお話しいただきました。
「中学・高校で学んだ知識も、今の仕事でフルに活用している。建築会社の良いところは、さまざまな部署があり、いろいろな力を活かせることだ。理系の力が必要な部署はもちろんあるし、マネージメントや経営的な面、歴史や芸術にあたる力を活かせる部署もある。就職してから、自分の力を活かせる仕事を見つけることもできる。どの道に進みたいかを迷っている人には、この点でお勧めだ」とお話しいただきました。
生徒からの質問として、「大学で建築を学んだことと、情報系とも言える今のお仕事とが直接結びついていないような気がするが、どのように取り組んでいるのか」「建築の歴史の中で開発された技術のうち、現在大きな役割を果たしているものは何か」などがありました。
次に、松崎さんにお話しいただきました。
まず、自己紹介をしていただきました。桐朋小、桐朋中高を経て、東京工業大学に進学、竹中工務店では構造設計に関わる仕事をなさっていて、現在は中高層の木造建築に取り組んでいらっしゃるとのことです。

「木造建築というと、一戸建ての住宅をイメージすると思うが、海外では『Wood First』の取り組みが進み、木造による20階建ての建物が造られている。建物のすべてが木で造られているわけではないが、適材適所で木を使い、木の魅力である『ぬくもりと安らぎの空間』を活かした建築になっている。木造が注目されているのは、持続可能な社会の実現、地球温暖化対策、脱炭素社会の実現という観点からだ。国土の3分の2が森林である日本において、木こそ日本の資源だと言える。木を計画的に伐採し、森林の手入れをしないと、森林の荒廃が進む。『植える→育てる→使う→植える』という循環資源としての木材の利用は、持続可能な社会の実現にも繋がるし、森林を守ることで、地球温暖化対策にもなる。海外では環境問題への意識が高いので木造建築が重視されているが、木造と関わりの深い文化を持つ日本で、震災などの関係もあってか、現在、環境への意識が、京都議定書の段階と比べ、後退している感がある。若い世代からアクションを起こしてほしいと願っている。
高層建築での木の活用は、いわゆる丸太の使用ではない。板を接着して強度を整え、耐火の性能を加えた耐火集成材『燃エンウッドR』を竹中工務店が開発し、利用している。そもそも木造建築が低層住宅に限られたのは火災予防の観点からだが、現在は規制緩和が進み、中高層の木造建築が日本でも造られ始めている」とお話しいただき、竹中工務店が手がけた木造建築をご紹介いただきました。
生徒からの質問として、「木の柱とコンクリートの柱とで、強度はどの程度違うのか」「耐火集成材の利用に際して、シロアリなど防虫対策も行われているのか」「建築における設計で、設計者のセンスが問われるように思うが、実際はどうか」などがありました。
次に、竹中工務店東京本店内をご案内いただき、建物中央にある図書ラウンジや、植物をさまざまに配置し、リフレッシュエリアや集中エリア、打ち合わせなどに使いやすいエリアなどのあるワークラウンジ「KOMOREBI」などを見学しました。
その後、竹中工務店東京本店の近くにあり、木造12階建「FLATS WOODS KIBA」の現場の体験会に参加しました。

最初に、12階にあるカフェテリアスペースで、「竹中工務店の木造・木質建築の普及の取り組み」、「FLATS WOODS KIBAのプロジェクト」について説明いただきました。

その後、生徒が2グループに分かれて、建物内の見学、体験をしました。

カフェテリアスペースの丸柱(中心部分のコンクリートに木を巻いたもの)に触れたり、

耐震補強用の壁の説明を受け、木材のブロックを見学したり、

12階のテラスにある、「燃エンウッドR」の柱に触れたり、

部屋の中で使われている「燃エンウッドR」について説明を受けたりしました。

最後に、「FLATS WOODS KIBA」の建築に関わっている方々の思いをまとめた映像を見学しました。

生徒からの質問として、「この建物では使用している木の本数はどれくらいか」などがありました。

参加した生徒の感想です。

・建築関係に興味があり、参加しました。実際の現場を見学でき、ゼネコンの仕事を深く理解できたように思います。(高2)

・最近木造建築が話題になっているとテレビで見る機会があり、元々畳や木を使った和風の建物が好きで、今回の見学では実際の建物に入れると知って、参加しました。木や木造建築について詳しい理解のないまま参加しましたが、日本や海外での中高層木造建築の現状を知ることができ、たいへん良かったです。一番印象に残っているのは、やはり現場の見学です。木造の中高層建築は、想像以上の驚きでした。(高1)

・竹中工務店に興味があり、参加しました。鉄筋コンクリート内の、鉄筋の配置を確認できるシステムが興味深かったですし、「燃エンウッドR」を使った木造の建物を実際に見学でき、たいへん勉強になりました。(高1)

・建築について少し興味があり、この機会にぜひ専門的な内容や進路についてさまざま聞いてみたいと思い、参加しました。「建築」といっても、建築現場の話から、設計で必要な情報技術の分野まで、仕事の幅が広く、驚きました。実際に建築中の中高層木造建築の見学ができましたし、建てる上での工夫について詳しい説明を聞き、建築への関心が高まりました。これからの時代、木造建築が環境や資源の点で重要になることについて理解が深まりました。今回は貴重なお話をありがとうございました。(中3)

・木工をはじめとした技術の活用について見学したいと思い、参加しました。木材を適材適所に使う建築の利点について理解できました。ありがとうございました。(中1)

 

本校で現在募集している海外語学研修として、2020年の夏休みに実施する予定の、ケンブリッジ大学での語学研修があります。
ケンブリッジ大学での海外語学研修は、2012年より2年に一度実施しています。高校1年・2年生の希望者を対象に、ケンブリッジ大学内のcollegeを使って研修します。プログラム内容は、本校教員と現地のプログラムコーディネーターとが連携して作成したオリジナルなものになっています。
詳細につきましては、2016年の様子をこちらでご確認いただけます。

進路企画として行っている「大学で研究してみませんか」。

今回は、中学入学試験後の休校を活用して、2月4日(火)に慶應義塾大学法学部を訪問しました。ご案内くださったのは、桐朋高等学校卒業で、慶應義塾大学法学部法律学科教授の大屋雄裕先生です。参加したのは、高校3年3名、高校2年3名、高校1年5名、中学3年2名、中学1年1名の合計14名です。

最初に、大屋先生から、慶應義塾大学三田キャンパス内にある、三田演説館をご紹介いただきました。演説館とは、日本最初の演説会堂として福沢諭吉が建てたものです。演説館の前には、福沢諭吉の胸像もありました。

その後、会議室で大屋先生による特別講義を受講しました。

最初に自己紹介をしていただきました。大屋先生は、桐朋中高卒業後、東京大学文科Ⅰ類に進学。法学部を卒業後、同大学院で助手として研究者の道に入り、名古屋大学法学研究科教授を経て、2015年より慶應義塾大学法学部教授として、法哲学を専攻なさっています。著書「自由とは何か-監視社会と個人の消滅」(ちくま新書)の一節は、高校の現代文の教科書に掲載されているとご紹介いただきました。

続いて、「法学部で学ぶこと」をテーマにお話しいただきました。

「法学部で学ぶ内容として、現存する法とその解釈・運用を扱う『実定法学』と、法一般に関する理論的・科学的な研究を行う『基礎法学』とがある。法律を学ぶ=法律を暗記することだと誤解されがちだが、現在施行されている法令の数はすべてを暗記できるレベルではないし、法律は改正され、内容も変わっていく。では、法を学ぶとはどのようなことなのか」

そして、法の解釈・運用の具体例として、『中古ゲーム訴訟』についてご説明いただきました。

そのうえで、「法を学ぶとは」として、

「法律の制定に際して想定していなかった事例に、その法律を単純に適用しようとしても、人々の納得が得られないなどのことがある。その際、事例への対応とその結果において『等しきものを等しく扱う』という、法律家としての正義の実現に向け、法律の解釈によって意味を発見する、創造する必要が生じる。さまざまな立場から考え、説得力のある論理を展開し、社会全体が納得できる対処を生み出す、こうした姿勢が『リーガルマインド』である。その際、最も大切となるのが論理的思考だ。

つまり、法学を学んだ者に期待されるのは、法律の知識ではなく、『リーガルマインド』を身につけることだ。この点で、法学部に向かない人は、『これが正しいと思う信念が強すぎる人』『他人を説得することや、論理的に意見を表明することに関心のない人』『これまで他の人がどう考えてきたのかに対して興味を持てない人』『この社会の運営に興味、関心、責任感を持てない人』である」

とご説明いただきました。

さらに、法律学の特徴と基礎法学の意義についてもお話しいただきました。

「法律の特徴として、法律の解釈に法律家自身も直接影響を受けるということがある。日本の裁判官が下した判決に、日本人である裁判官本人も規定されるわけである。法律家は、システムの内側にいながらシステムの研究をするので、実践的、直接的な面を持つ一方、客観性に欠ける点で、科学と相容れない面を持つ。科学的視点、外的観点から法を研究する基礎法学、法哲学は、法や社会に対して批判的な議論を展開し、法を見直し、改善する役割を担っている。そのため、現存の法が有効に機能せず、社会のコンセンサスが失われた際に、基礎法学、法哲学の重要性は増す。現在、基礎法学・法哲学の必要性が高まっている。その理由の一つがAIの進化で、AIをどう法で取り締まるのかが問題となっている」

続いて、「AIとその法的規律」をテーマにお話しいただきました。

「新たな技術の誕生は、新たなリスクの誕生でもある。だからといって、リスクを過剰に重視すると、開発者の意欲を削ぎ、技術の発展の妨げになる。

AIのデメリットを予防・軽減しつつ、AIのメリットを活かして社会の課題解決を目指す、AI-Readyな社会、AIを有効かつ安全に利用できる社会の構築が求められている」

次に、AIの定義が専門家においても不明瞭であるため、世間でAIとして捉えられているものが複数種類あること、それぞれの具体例と特徴についてご説明いただきました。

その後、AIと法との関わりについてご説明いただきました。

「法は、行為に対する法の制裁が行為後に実行されるため、事後規制にあたるが、制裁の内容を事前に予告するものでもある。予告をすることで、行為者が行為によって生じる結果を予測し、行為を改めることを期待している。ただし、これが機能するには、行為の結果を予測できる予見可能性と、不幸な結果を避けられる回避可能性が補償されていることが必要となる。

ディープラーニングをするAIは、問題に対してAIがどういう思考過程で判断したのかが、開発者・利用者にわからないので、予見可能性が成立しない。さらに、情報システムのネットワーク化によりAIの行う対応の自律化・高速化が進むことで、人間によるコントロールが効かず、回避可能性が低下する。

AIに対する法規制で考慮すべき点は、AIの生み出すリスクに対して、法の効力によって守るべきものの把握と分析を進め、被害が生じた際の対処を検討しておくことがある。さらに、不明確な規制を予告すると技術進歩の妨げになるという認識を持ったうえで取り組むとともに、法による規制が人々の行為をコントロールできるだけの実効性を持っているのかについても確認しなければならない」

具体例として、自動運転に対する法規制での考え方をご紹介いただきました。

最後に、「法システムは一度作って終わりではなく、常に検証し、繰り返し改善する必要がある。こうした視点を持ち、取り組む意欲のある人に法律家になってほしい」とお話しいただきました。

生徒からの質問として、「事後規制から事前規制への転化について説明いただいたが、自らの行為によってどんな規制を受けるのかを予測できず、過ちを起こすことがあるなら、事後規制の方が有効と言えるのではないか」「リーガルマインドには哲学との共通点があるように思う。哲学を法学に持ち込んだことによってリーガルマインドが生まれたのか」「法の制定に世論や政治家が影響を及ぼし、時に好ましくない法が制定されるようだが、法の制定における法の専門家による取り組みが世論や政治家に妨げられてしまって良いのか」などがありました。

参加した生徒の感想です。

・進学先として法学部を調べていたとき、法哲学という分野があることを知り、興味を持っていたので参加しました。法哲学は、内容が哲学に近くプラクティカルな学問ではないと思っていたが、AIの問題とも大きく関係するなど、現実との関わりの深い学問分野だと感じた。第一線で活躍されている教授の方のお話で、今世界がどのように変化しているのかを知ることができ、参加して良かったと思いました。(高3)

・法学部志望なので参加しました。お話の中で「法学部に向いていない人」について説明していただき、先生のお話にもありましたが、高校では法学をほとんど学ばないので、自分が向いているのかを考えるきっかけをもらえました。法学部のこと、AIと法律の関わりなど、興味深いお話ばかりで、大いに刺激を受けましたし、勉強になりました。ありがとうございました。(高2)

・自分は理系志望だが、内容がおもしろそうだったし、文系の知識・理解も持ちたいと思っているので、参加しました。初めて聞くようなお話ばかりで、大変勉強になりました。特に、裁判官は厳格に法を運用するものだと思っていましたが、リーガルマインドを持って、適切に裁いていることとその重要性を知ることができました。法律や法律家の本質を理解できたように思います。(高1)

・法学部がどういうところなのかを知りたくて、参加しました。法について考える機会になり、法学が実に実践的な学問であることを理解できて、将来、自分が進む選択肢が増えたように思います。(高1)

・元々哲学に興味があったのと、荒井先生の助言もあり、参加しました。抽象的な内容の説明で、とっつきにくいと想像していましたが、大屋先生が数多く具体例を挙げながらわかりやすく説明してくださったので、概要を理解できたように思います。哲学に興味があるので、「リーガルマインド」についてのお話が特に心に残りましたし、論理的思考の大切さを実感できました。ありがとうございました。(高1)

・自分の部活の先輩が慶應大学法学部に進学したので、参加しました。法学部で何を学ぶのかについて、イメージをつかめたように思います。素晴らしいお話、ありがとうございました。(中3)

・法学部でどのような勉強をするのか、どういう進路があるのかを知りたくて、参加しました。事前に、法学部では、法律を暗唱したり、法の歴史をたどったり、という形で研究していると想像していましたが、実際は、論理的な思考力を駆使して、適正な法律について考える学問だと知り、興味が湧きました。また、AIに対して、法学はどう対峙するのかについても教えていただき、大変勉強になりました。今日、AIをはじめ、情報技術が急速に発展している中で、改めて法学の必要性とその将来性が高まっていると実感しました。今回は本当にありがとうございました。(中3)

・自分の進路を決めるのに役立てたいと思い、参加しました。法学に対して、興味・関心が高まりました。ありがとうございました。(中1)

進路企画として、本校卒業生の現役東大生が東京大学を案内するという機会を設けました。
題して、“現役東大生による大学ツアー”。

7月14日(日)に、現役東大生6名が本郷キャンパスを案内しました。参加したのは、高校2年生6名、高校1年生6名、中学3年生1名の計13名です。

まず、赤門前に全員集合し、案内中も気軽に中高校生と交流ができるように、東大生の自己紹介が行われました。その後東大生の案内により、キャンパス内のさまざまな施設を見学しました。

赤門前に集合しましたが、あいにくの雨でした。

ツアーの前に、東大生の自己紹介がありました。

ツアー開始。構内を歩き、図書館や安田講堂、大学生協、学食などを巡り、各学部の校舎紹介などもありました。

その後、構内の教室において、高校時代の取り組み、大学生活の今、大学にはどんなチャンスが待ってるか等についてのプレゼンが行われ、様々な学部学科の先輩からの興味深い話に耳を傾けました。個別相談の時間もあり、大学生活についてや大学にはいるための勉強法・心構えなどを相談していました。

10:30から16:00までの有意義な時間はあっという間に過ぎました。

 

 

 

NPO法人映画甲子園主催『高校生のためのeiga worldcup2019』の最終審査結果が2019年12月7日に発表されました。本校高校2年生と他校生でグループを組み、作成した2作品、『Nah Nah Teen』が自由部門で優秀音楽賞、『彩光の一手』が地域部門で全国2位にあたる優秀作品賞を受賞しました。

本校生に向けた上映会を以下の日程で実施します。場所は、本校ホールです。

2月19日(水)~21日(金)の放課後、2作品合わせて1時間程度の上映になります。鑑賞を希望する方は、ぜひご参加ください。

監督を務めた太田慎一郎君のコメントです。

表彰式にて。『彩光の一手』が地域部門優秀作品賞を受賞した際の写真

「高校2年E組の太田慎一郎です。今回僕たちは桐朋内と外部の高校で有志を募り、その仲間で夏に映画『Nah Nah Teen』と『彩光の一手』を制作し、提出先の『NPO法人映画甲子園主催 高校生のためのeiga worldcup』という高校生映画の全国大会で、優秀作品賞と優秀音楽賞を受賞しました。もちろん、僕たちが身を削って作った作品で賞を頂けたのは大変嬉しいことですが、何よりも参加してくれたメンバーが制作中楽しそうだったことが、僕の一番嬉しかったことです。
僕は中学3年の終わりに有志で短編映画を作り始めました。その時は、”中学卒業記念”という名目で有志を募って、『映画が好きだから』『なんか作ってみたいから』という欲で作り始めたのですが、制作し終わってその映画を上映した時、2つのことに気付きました。ひとつは、みんなで同じ目標に向かって一緒に何かを作り上げることが、大変でもあり同時に楽しく、作り終えた時に大きな達成感があったこと。そしてもうひとつは、価値観も性格も違う人間同士が考えを共有するというのはとても素晴らしいということです。
桐朋では、部活や委員会など比較的同じようなタイプの人と行動することが多いです。だから僕たちが有志で集まって活動した時、とても刺激的な雰囲気が生まれました。小説をよく書く脚本の人もいれば、最新の技術が好きで知識がある人、アクションっぽく動くのが得意な人もいれば、リーダーシップを取ってみんなをまとめられる人、場を盛り上げてくれる人、普段は大人しいけど知的で想像力に溢れた人、絵を描くのが得意な人、ポスターデザインやデスクワークが好きな人、音楽を作れる人、サポートが好きな人、などなど、有志で集まると、本当に多種多様な人が集まります。そして参加してくれたメンバーから『あいつとはあまり喋ったことなかったけど、こんな面白い人だったんだ』とか『こんな考え方もあるのね』という声を聞き、本当にやりがいを感じました。もしかしたら、この複雑化した社会で、このように価値観の違いを互いに共有することはとても重要なことなのかも知れません。
そしてその後は『作りたい』という私的な理由よりかはむしろ『みんなが違いを共有できる場を作りたい』という理由で、短編映画に限らず、バンドを組んで音楽、日本語を交えた英語の演劇などを、今日まで有志で作り続けました。今回作品を作り上げることができたのは、参加してくれたメンバーだけでなく、協力してくれた先生やお店、外部の人など沢山の方や、桐朋という自由で個人のアイデンティティを尊重する環境のおかげです。今は多くの人への感謝の気持ちでいっぱいです。
今回受賞した2つの作品は、『NPO法人映画甲子園主催 高校生のためのeiga worldcup』のHPから視聴可能です。お時間のある時に、是非観て頂けると嬉しいです。
長くなってしまいましたが、ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。」

作品のあらすじです。
「NahNahTeen」(35分)
人間関係や社会についての僕なりの考えを、7つのパートに分けて、ドラマとミュージカルでポップに表現した作品です!!
今作は桐朋生だけでなく、桐朋女子や学芸大附属高の友達とも一緒に制作しました!!
カメラワークや色使い、そして音楽にこだわり、映画甲子園では優秀音楽賞を受賞しました!!
そして、複数の視点を様々な方法で表現し、パートごとに雰囲気が違うのも今作の魅力なので、そういうところも楽しんで観て頂けたらなと思います!!

『Nah Nah Teen』の撮影最終日に撮った集合写真

『彩光の一手」(10分)

父親の転勤のため転校の多い主人公には、「故郷」と呼べる場所がない。今度の転校先でも、また同じことの繰り返しだとおもっていたのだが…。

“故郷”が今年の映画甲子園の地域部門のテーマであり、それに対して「故郷の無い人にとっての本当の故郷とは?」というアプローチで、少人数で制作し、映画甲子園では優秀作品賞を受賞しました!!
今作の脚本は、1年前に制作した「翡翠」に引き続き、高校2年大藏幹太君が担当しました!!
学校だけでなく、国立市内のあらゆる場所でロケをしましたので、是非そんなところも含めて楽しく観て頂けたらなと思います!!

進路企画として行っている「大学で研究してみませんか」。
今回は、2学期期末考査後の自宅学習期間にあたる12月19日(木)に、東洋大学社会学部に訪問しました。ご案内くださったのは、桐朋高等学校卒業で、東洋大学社会学部社会文化システム学科教授の高橋典史先生です。参加したのは、高校3年1名、高校2年3名、高校1年1名、中学3年1名、合計6名です。

最初に、高橋先生の、宗教社会学の講義に参加しました。

受講生は、大学2・3年生が中心で、230名あまりでしたが、大教室の一番前で講義を受けました。講義のテーマは「宗教と多文化共生のまとめ」で、概略は次の内容でした。
「在日外国人労働者の増加や移民のもたらす宗教文化の影響などから、宗教組織やその活動において、グローバル化、多様化が進んでいる。この点を社会調査する際に役立つ研究視点として、移民による宗教を、「モノエスニックな宗教組織」(特定の民族で構成されているもの)、「マルチエスニックな宗教組織」(複数の民族を包含するもの)という2類型で捉える見方がある。また、多文化共生を考える上で、それに関する、宗教組織の活動を二つに分類することが必要になる。一つは、マルチエスニックな組織における「宗教組織内<多文化共生>」で、言語や背景の異なる民族が組織内でいかに共存できるかをマネージメントすること、具体的には儀式をどの言語で行うかなどがある。もう一つは、「宗教組織外<多文化共生>」である。宗教組織の外側にあたる公的な領域において、布教活動などとは別に、多文化共生に該当する社会活動を行うことである。例として、地域における日本語教育などがある。社会学的に重要となるのは、宗教団体が社会に対してどのような活動をしているかを捉えることである。地域社会において多文化共生政策を実施する活動主体として、行政・NPO・宗教団体などがあるが、日本の経済力の低下により、行政による社会福祉や公共サービスではスリム化、民営化が進められている。こうした中で、NPOなどは行政の下請け企業化する状況が生じ、補助金への依存が進む一方、不況による補助金の削減もあって、NPOの活動は翻弄されている。一方、宗教団体は、行政に依存しておらず、理念的・人的・経済的に自立し、幅広く社会貢献活動に取り組んでいるものも少なくない。地域の多文化共生において存在感が増している宗教団体の活動に、学術的、社会的に目を向ける必要性がある。ただし、宗教団体は社会活動に特化した団体ではないので、宗教理念に違和感を覚えるなど、社会から賛同されにくい面もあり、宗教団体による多文化共生の活動にも限界がある点には留意が必要である」

次に、会議室に移動し、質疑応答を基本として、高橋先生から1時間ほどお話をお伺いしました。

最初に、自己紹介をしていただきました。
「大学では、民俗学・文化人類学を学びたいと思い、千葉大学文学部に進学した。きっかけとして、一つは、自分は東京郊外の農村地域のあきる野市出身で、お祭りや地域の行事が多く、お寺や神社を身近に感じながら育ったが、桐朋中に来て、他の地域では宗教と関わりのない生活をしていることを知り、違いに興味を持ったこと。二つ目として、中3の修学旅行で遠野に行った時、引率の小柳敏志先生 から、柳田国男の『遠野物語』や日本人の伝統的な考え方などに関するお話を聞き、自分の幼い頃の体験はかつての日本で一般的になされていたことだが、近代化、都市化が進み、大きく変化していることに興味を持ったことがある。その後、大学生の頃、9.11の同時多発テロがあり、文化や宗教の衝突がもたらす事態に衝撃を受け、宗教の社会的意義と多文化共生に関心を持つようになり、また、中高生の頃、オウム真理教事件が起き、興味本位からではあるが、宗教に関心を持っていたこともあって、宗教社会学を志し、大学院から一橋大学社会学研究科に。大学院で学ぶ中で研究者の道に魅力を感じ、2012年から東洋大学社会学部に勤めている」
生徒からの質問として、「一般企業では業績などにより給与等に違いが生じると思うが、研究者の世界ではどうか?」「キリスト教関係と思われる、日本語に堪能な外国人から『英語を教えるから来ないか』と、街中で声をかけられたことがある。不審に思い、相手にしなかったが、そんな自分がいずれ宗教に目覚める可能性はあるのか?」「日本に移民が増えることで、自分の回りにも宗教に対する考え方の異なる人が増えていくだろう。どんな問題が起き、それをどう解決していくべきか?」「宗教社会学における宗教の定義とは何か?」「社会学の研究が、社会に与える影響力についてどう考えているか?」などがあり、詳しくご説明いただきました。
先生からのご説明の一部をご紹介します。
「キリスト教で、同性愛に否定的な教義がある一方で、アメリカでは、同性婚が認められていて、扱いの違いが議論になっていると聞いた。今後、宗教の尊重と、人間としてのマイノリティへの理解は両立できると思うか」という質問については、
「授業では、宗教が社会に適合している例として多文化共生を話題にしたが、宗教の中には、保守的、伝統的な考えから、近代的な人権とは必ずしも一致しない価値観を持つものもある。日本では、人権問題への意識の高い人が、こうした宗教の保守的傾向を忌避してコミュニケーションを取らない傾向がある。一方、アメリカなどでは、キリスト教の各宗派で考え方に違いがあっても、社会的に対話や議論がなされ、宗教側が考えを変えていくこともある。もちろん、日本でも、個々の宗教者レベルで、社会との対話に積極的な人もいるが、団体レベルの取り組みはそれほど進んでいない。研究者やメディアが宗教団体に働きかけていくことで、社会と積極的に対話する、開かれた宗教へと促していく必要を感じている。去年、イギリスでLGBTの若いムスリムたちと話をした。彼らはイスラム教の信仰を続けたいのだが、イスラム教はLGBTに否定的なため、ムスリムのコミュニティではなかなか受け入れてもらえない。その状況でも試行錯誤しながら頑張っていると聞いた。今後日本でも、宗教団体の古い体質の中で新しい動きを起こす人たちと社会がいかに連携していくかが、問題となるだろう」とご説明いただきました。
また、「アメリカでは、建国の理念である『神の下の平等』を重視していると聞く。宗教によって、格差が解消する可能性はあるか?」に対しては、
「アメリカは、清教徒が信仰をもとに建国し、他の移民もそれに賛同することで国家となっていった。人種や移民に対する差別という現実はあるが、宗教社会学者のロバート・ベラーが『市民宗教』と語ったように、理念としては『神の下の平等』が共有されていて、さまざまな問題に直面した際の強みになっている。宗教ではないが、フランスでは共和国の理念が浸透している。日本は、このような宗教的理念や共通の基盤となる思想が弱く、社会的課題と向き合う際に、拠って立つ根拠が薄弱であるため、普遍的価値の構築と共有が今後の課題だと考えている。実際、日本人による議論は、共通の価値観をベースに解決策、合意点を見出す形とはならず、それぞれの立場で意見を表明するだけで、問題が先送りになることが多い。多文化共生においても、外国人による『ご近所トラブル』が生じた際、『郷に入ったら郷に従え』の発想から日本の習慣を押しつけて済ますことが多い。こうした問題について多文化共生の専門家に聞くと、トラブルの関係者が議論を通して、お互いが納得できるルール、原則を決めることが重要だという。これは外国人に対してだけでなく、さまざまな価値観、バックグラウンドを持つ他のマイノリティに対しても同様のはずだ。皆で意見を出し合って、共有できる原則、価値観を作り上げ、それを尊重しながら社会を動かしていく、こうした姿勢を、日本人も教育などを通して身につけていくことが、今後ますます必要になるだろう。」とお話しいただきました。

参加した生徒の感想です。
・大学は、推薦入試で文学部に進学することが決定しているので、入学後の学科の選考に役立つのではと考え、さらに、以前に宮台真司氏の社会学の本を読んだことがあり、興味があったので、参加しました。第一線で活躍している教授の方の講義に参加し、さらに、1時間以上にわたって、質疑応答ができて大変良かったです。大学で社会学を専攻することも考えているので、とても参考になりました。自分のいる環境では、宗教にとっつきにくい面を感じていましたが、社会学を介することで、実生活と結びつくものとして、身近に感じることができました。(高3)
・オープンキャンパスでも模擬授業はありますが、本物の大学の講義を実際に受けることができ、オープンキャンパスでは味わえない、生の雰囲気を知ることができたように思います。日本に外国人が増えると、宗教が多様化することや宗教団体が公的領域で行っている活動の存在などについて、非常に興味深いお話を聞くことができ、楽しかったです。外国人に初めて勧誘されそうになったときのモヤモヤした気持ちが消えました。ありがとうございました。(高2)
・社会学に興味があり、高校2年生対象の在校生卒業生懇談会の際の高橋先生のお話がとても興味深かったので、参加しました。大学の授業に参加して、こんなにおもしろいんだとわかりましたし、大人数の授業の雰囲気も実感できました。また、質問の時間には、丁寧に説明いただいたので、有意義な時間を過ごすことができました。現在、SDGsの動画コンテストに向けて、映画制作に取り組んでいるので、社会問題をテーマとして扱う際の注意点などについて、教えていただきたいと思っています。(高2)
・自分は社会学に興味があり、一つの正解に絞れない「社会問題」というテーマに対して、人々がそれぞれどんな価値観を持っているのか、あるいは、自分の考えとはどう違っているのかを知りたいと思っています。高橋先生の講義を受け、元来の固体化された宗教に対する概念とは違って、先生独自の見解を見出し、宗教社会学への理解を深めていこうとする姿勢に感銘を受けました。日本にも滞日外国人が増加しているが、そのことを考える際、ヨーロッパの宗教文化だけを基準に捉えるのは正しくないというお考えを聞けて良かったと思います。また、宗教設備を公的教育にも利用している集団もあるなどのお話を聞き、異文化交流に対する理解も深まったように思います。(高2)
・自分は理系志望ですが、文系の研究を一度見てみたかったし、宗教にも興味があるので参加しました。なかなか体験できない、大学の実際の授業に参加し、大学というものを実感できましたし、宗教社会学についても深い内容を知ることができました。良い経験になりましたし、関心が理系に偏っている自分には、新しい見方を持つ良いきっかけになったと感じています。ありがとうございました。(高1)
・自分にはあまりなじみのない宗教を、社会学的視点から捉えることによって、どう考えることができるのかについて学んだり、大学の先生と話したりしてみたかったので、参加しました。実際に200人を超える講義に参加し、宗教社会学について学べただけでなく、大学の講義の雰囲気を感じ取ることができました。また、身近な話題から、社会学は何を研究し、社会にどう発信していくのかについて考えることができ、とても良かったです。現代の社会問題、宗教問題、さらには、社会における社会学の役割について詳しく知ることができました。ありがとうございました。(中3)

進路企画として行っている「大学で研究してみませんか」。

今回は、2学期期末考査後の自宅学習期間にあたる12月17日(火)に東京理科大学薬学部薬学科を訪問しました。ご案内くださったのは、桐朋高等学校卒業で、東京理科大学薬学部薬学科教授の上村直樹先生、同じく桐朋高等学校卒業で、東京理科大学薬学部臨床教授の高橋裕先生です。参加したのは、高校1年4名、中学3年1名、中学2年1名、中学1年2名、合計8名です。

最初に、東京理科大学野田統括部薬学事務課課長の森知春様より、東京理科大学についてご説明いただきました。東京理科大学は、東京大学に次いで、日本で2番目に古い理系大学であること、大学のランキングで、教育力は大学全体で4位、私学の中では1位、研究力も全体9位、私学で1位、就職力は大学全体で1位であること、学生の書くレポート・論文の枚数は、大学4年間で約1,000枚、修士・博士課程まで含めると約1,200枚に達し、学習への意識が高い大学であること、薬学部のキャンパスは、2025年に葛飾に移転の予定であること、薬草の学習のための薬用植物園や薬学実務実習のための病棟・調剤・薬局の実習室があり、施設が充実していることなどをお話しくださいました。

続いて、医療分子生物学を研究され、がんの治療薬の開発に取り組んでいらっしゃる高澤涼子先生の研究室を見学しました。

「正常な細胞では細胞増殖がコントロールされているが、がん細胞はコントロールが効かず、どんどん増え続けてしまう。この研究室では、がん細胞の増殖を助けているタンパク質の働きを特異的に阻害する化合物について研究している。

細胞の死には2種類あり、遺伝子にプログラムされた、正常な死にあたるのがアポトーシスで、死んだ細胞は急激に収縮し、死後に他の細胞に食べられて再利用される。一方、細胞が傷ついた結果死ぬのがネクローシスで、この場合、細胞膜が崩壊し、有害物質が周辺にばらまかれ、炎症を起こす。がんでは、炎症によって痛みや苦しみが生じるので、がん細胞をアポトーシスに導くことが重要となる」とご説明いただきました。

その後、培養した肺がんの細胞においてアポトーシスがどのように起こるのかを、顕微鏡の映像を基に観察しました。

生きているがん細胞の映像

がん細胞に抗がん剤を加えた際のアポトーシスの様子

最後に、がん細胞が培養されている部屋も見学しました。

次に、薬剤師になるための学習として、調剤室内での薬の種類、扱いなどについて、根岸健一先生からご説明いただきました。

錠剤、粉薬、水剤についてご紹介いただき、いろいろな水剤を手に取って、匂いや色の違いを確認しました。

薬を使っての治療における薬剤師の役割として、「医師は処方箋によって薬の指示を出すが、薬剤師は、患者の状況を考慮し、医師と協議の上で薬の量を調整するなどして、より安全かつ有効に薬が効くよう、取り組んでいる」とお話しいただきました。

その後、注射器に注射薬を吸引し、配合変化の様子を確認する体験をしました。

次に、河野洋平先生にご指導いただきながら、軟膏板とへらを使って2種類の軟膏を混ぜ、容器に入れる体験をしました。

その後、軟膏を混ぜる機械の実演を見学し、自分が混ぜた物と、混ぜ具合を比較しました。

さらに、調剤の際に高い清浄度を作り出すクリーンベンチ・安全キャビネットについてご説明いただき、見学しました。

次に、上村先生から、薬剤師の調剤過誤防止に関する研究についてご紹介いただきました。一例として、視線を追跡できるアイトラッカーを使った、医薬品個装ケースの識別性に関する研究の一部を、研究室の学生の方にご協力いただき、体験しました。アイトラッカーを装着して、個装ケースを並べた状況を模したシートから、指示された番号の医薬品を探す際の視線の動きを解析したデータを確認しました。

ケースのデザインによって、識別のしやすさがどの程度変わるかを実感できました。

最後に、上村先生・高橋先生から、ご自身が薬学・薬剤師の道に進むと決めた理由、薬学部卒業後の進路、薬剤師のやりがいについてお話しいただきました。

さらに、薬局の現状と今後について、映像とともにご説明いただき、

「薬剤師の仕事でも、国内、海外ともにロボットがさまざまに活用されつつある。ロボットアームを使って安全キャビネット内で抗がん剤などを調剤したり、薬の棚から薬を取り出したりする作業も機械化されている。調剤する仕事などをロボットが行うようになる中で、今後の薬剤師は、患者の相談に乗り、患者にとってベストな治療となる薬を選ぶなど、人と対する仕事が中心となる」とお話しいただきました。

生徒からの質問として、「薬学を学んで、創薬の研究に進めるのか」「薬学を学んで、薬局を経営するようになると、薬学とは違う知識が必要になる。どう取り組んだのか?」などがありました。二つ目の質問に、上村先生から「自分も勉強したが、桐朋の卒業生はさまざまな道で活躍している。その繋がりの中で、さまざまな専門家と知り合い、一緒に仕事をしている」とお答えいただきました。

参加した生徒の感想です。

・先生方にお会いして、貴重な体験ができました。先生方のご説明がとても興味深く、参加の前と後では、東京理科大学、薬学部に対する印象が大きく変わりました。薬学は、薬学のことしか学ばないのではと思っていましたが、薬学に関することなら何でも扱うのだとわかりました。ありがとうございました。(高1)

・薬学部に興味があったので参加しました。実際に薬を触る体験もできましたし、お話を聞いて、薬学部の良いところ、特徴への理解が深まり、「将来、薬学の道に進むのも良いな」と思うことができました。本当に、先生方のお話を聞けて良かったと思っています。(高1)

・将来、薬学系に進みたいと思っているし、大学の研究室も見学したかったので、参加しました。内容が単にお話を聞くだけでなく、軟膏を混ぜる実習があったり、薬品に触れることができたり、たくさんの施設・機材を見学できたりして、大学で研究してみたいと強く思うようになりました。また、薬剤師の現状を知ることができ、大変参考になりました。この度は貴重な機会をご用意いただき、誠にありがとうございました。(高1)

・薬について学ぶ機会はなかなかなく、また、薬剤師とはどのような仕事か、薬剤師になるにはどのような勉強をするのかを知りたくて、参加しました。実際に薬を作ったり、充実した設備を見学できたりして、参加して良かったです。特に、薬学部ではどんな研究をしているのかを、具体的に、かつ深く学ぶことができました。今回の企画で、自分の知らない世界を見ることができました。ありがとうございました。(中3)

11月23日(土)に、本校ホールにて行われましたPTA主催講演会の様子を、本校新聞局員が記事にまとめました。ホームページでもご紹介いたします。

「大隅教授、桐朋へ来校」

去る11月23日、PTA主催で講演会が開催され、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典教授が本校に来校された。大隅教授はオートファジー(細胞の自食作用)の研究をされており、大きな功績を残されている。

講演会は、「半世紀の研究を振り返って ‐基礎研究の大切さ‐」というテーマで、約一時間にわたり行われた。主に講演内容は大隅教授の研究についてで、オートファジーのいろはから今後の展望まで、オートファジーに関する多くの内容が解説された。また、最後には今までの研究を振り返るとともに、若者へのメッセージということで我々中高生へのアドバイスを頂いた。

講演会後、場所をホールから食堂に移し、代表生徒による大隅教授への質問が行われた。主に新聞局員と生物部員がメンバーとなり、研究などに関することについて直接質問をする機会を得た。

以下に、その内容を記す。

――やりたい事を大切にというメッセージを仰っていましたが、やりたい事をやり通す際に意識すべきことは何でしょうか。

「まずもって、社会に求められている研究がストレートにやりたいことと直結していなくても心配しないでください。日本では早くから成果を上げることが求められますが、海外では、そういった風潮はあまりありません。また、仮にやりたいことがなくても、やりたい事を見つけなければならないという強迫観念に囚われる必要はありません。加えて、自分の研究室においても、オートファジーという主題に対して様々な目的で様々な分野の人が関わっているので、協力を得る際には協力にも色々な形があるということを念頭においてほしいです。」

――30年もの間研究を続けてくることができた理由に、様々な技術の発展を挙げていらっしゃいました。印象に残っている科学技術の発展は何でしょうか。

「顕微鏡技術の発展が印象に残っています。先日、最新式の電子顕微鏡に触れる機会があったのですが、オートファジーを発見した当時の顕微鏡と比較すると、分子構造の見え方には大きな違いがありました。その他の分野においても科学技術の発展には目覚ましいものがあります。色々な勉強をすることで世界の変化を知っていって欲しいと思います。その一方で、すべてを追う必要はありません。すべてを追っていると、この情報過多の現代で情報に埋没してしまいます。やりたい事をやるためのものや楽しさを勉強していって欲しいです。」

――基礎研究において行き詰った際にはどうされていましたか。また、どの様にモチベーションを維持していらっしゃいましたか。

「思っているよりも、なんとかなるものです(笑)。研究の際には、前提として大きな問いを自分のなかで持っているとよいと思います。自分が研究していることの背後にあるものを常に考え続けていればモチベーションを維持していけますし、次の課題も見えてきます。自分の研究室では、一つの事だけをやるのではなく多角的に研究を行っているので、なにかしらの発見が常にあります。研究はイチゼロの世界ではありません。正しい実験を続けていれば、必ず次の課題が見えてきます。」

――中高生の時には、どの様に将来を思い描いていらっしゃいましたか。

「高校生の時には研究者を目指すことを決めていました。しかし、その理由は消去法で、スポーツも音楽もあまり得意ではなかったのが大きな理由でした。自分の能力を活かし社会に貢献できるのではと思えたのが研究者でした。」

――研究者を志した具体的な出来事はありましたか。

「大学に入学した当初は何も計画はありませんでした。ましてや、世の中が流動的である今の現代では、早くから何かの専門家である必要はありません。じっくりと自分が何になりたいのかを問うといいと思います。私自身は最初化学の分野に興味を持っていましたが、大学の授業があまり面白くなく、そんな時に出会ったのがこの分子生物学でした。この分野には、自分をワクワクさせる何かがありました。皆さんには、ワクワクする気持ちを大切にして欲しいです。また、今その様な気持ちを持っていなくても焦る必要はありません。生きていくうちに必ず見つかります。また文系、理系といって区分は日本だけのものなので、幅広い分野に興味を持って欲しいと思います。」

大隅教授のメッセージのなかに、小さなことにも疑問を持ち続け沢山のものに興味を持ってほしいというものがあった。今回の講演会などのイベントを含め、功績を残された多くの方の考え方を吸収することは、自らの進路の幅を広げるほか多角的な視点を持つことにも有用である。このような機会に触れることは、多様化が叫ばれるこの時代で自らの付加価値をアピールするときにも大いに重要になってくるであろう。

 

オートファジーとは?

オートファジーを知る前に、タンパク質と生体膜について理解する必要がある。まず、タンパク質について。タンパク質と聞いて、多くの人が食品の中などに含まれる栄養素としてのタンパク質を思い浮かべると思うが、生物学的においてはより多くの分野の説明に用いられる。生体内の生命活性に大きく関わり、生物の生命活動とは切っても切れないのがこのタンパク質なのだ。また、すべてのタンパク質は20種類前後のアミノ酸から構成されているため、地球上の生命が一つの共通の祖先を起源としているとも言うことができる。

次に、生体膜について。細胞内の細胞小器官がそれぞれの境界として持つ膜のことを生体膜といい、それはリン脂質二重層という流動性の高い構造をもつ。また、タンパク質はリボソームで生じ、そこから生体膜を通り細胞内外へと輸送されて機能する。

さて、大隅教授が発見したオートファジーは、タンパク質分解の方法の一つである。ここで、講演会で大隅教授が挙げていた例を一つ引用したい。大隅教授は、大学で最初の生物の授業で学生たちに、「1秒間で何個の赤血球が体内で生成されているか計算せよ」という課題を与える。この課題の回答は毎秒30万細胞であり、つまり、30万細胞の生成と同時に同規模の破壊も起こっているということになる。大隅教授はこの課題を通して学生たちに、合成と分解がいかに普遍的かを伝えようとしているのである。

例の通り合成と分解は非常に重要であり、特に合成に比べ研究の対象とされてこなかった分解も同様に重要であると言える。人のカラダのタンパク質は2ヶ月から3ヶ月で完全に置き換えられることからも分かるように、私たち生命は合成と分解の平衡に支えられているのだ。また、分解の際にタンパク質は、壊れているのではなく壊されているのだということも押さえておきたい。しかもその過程では、合成の時にも劣らない多数の遺伝子が関わっているのである。

そんなタンパク質分解の方法の一つであるオートファジーは、ギリシャ語の「オート(自分)」と「ファジー(食べる)」という言葉から名付けられており、その和名を自食作用という。オートファジーでは、その名の通り細胞内のタンパク質を食べてしまうような形で分解が行われる。まず、細胞内で不要となった細胞小器官やタンパク質が、リン脂質二重層の生体膜で包まれ、オートファゴソームと呼ばれる小胞が形成される。これに各種の分解酵素を含むリソソームが融合し、内部のタンパク質などが分解されるのだ。これによりタンパク質から分解され生じたアミノ酸は、再び細胞内でタンパク質の合成などに利用される。

このようにして起こるオートファジーは、飢餓適応、細胞内浄化、抗加齢、抗原提示、胚発生、病原体排除、腫瘍抑制など、非常に重要な生理機能を併せ持ち、生物学の中でも様々な研究分野から注目が集まっている。また、医学においてもオートファジーはホットな話題であり、神経性疾患やガン、生活習慣病などとの関連が研究されている。それに伴うオートファジーの制御剤開発も近年テーマとなっており、諸外国では大きなフィールドを築いている。

進路企画として行っている「大学で研究してみませんか」。

今回は、保護者の方との面談期間のため午前中授業となる11月19日(火)に、桐朋高等学校卒業で、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森泰夫さんにご来校いただき、「スポーツとみなさんの関わりについて」というタイトルでご講演いただきました。生徒は、中高陸上競技部を中心に、57名が参加しました。

最初に、自己紹介をしていただきました。森さんは桐朋中高、さらに大学でも、陸上競技に取り組み、大学では、連盟の一員としても関わったこと、その後、企業に就職されましたが、縁あって、日本陸上競技連盟に転職し、大会運営、広報、強化、普及などさまざまな活動を統括する役割を担当され、現在は、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の大会運営局次長として、大会の運営に奔走なさっていることなどをお話しくださいました。

続いて、世界陸上やアジア大会のダイジェスト映像を交えながら、以下のようなお話をしていただきました。

「一般的な人々のスポーツへの関わり方は、選手として仲間とともに『スポーツをする』、プロスポーツなどの『スポーツを見る』といった形があるが、もう一つの大切な関わりとして、スポーツ団体の運営、イベントの運営スタッフとして『スポーツを支える』立場がある。

実際のスポーツ界でも、選手として競技をする人、メディアの一員、医師や教員など、職業を通してスポーツに関わる人、大会運営においてビジネスとしてスポーツに関わる人もいるが、多くは、スポーツ少年団などでの指導の形で、ボランティアとして関わっている。

ボランティアとしての関わりでは、日常のスポーツ指導、スポーツ組織の運営においては、そのスポーツに対する専門性が求められるが、オリンピックなど、ビッグイベントのボランティアでは、専門性はさほど重視されない。

実際、「日常」にあたる陸上競技の地域大会に関わっている人数は、1年間で100万人余りとなり、「非日常」にあたる2020年のオリンピック・パラリンピック大会で想定しているボランティアの人数を上回っている。スポーツはボランティアに支えられている。

ところが、忙しさ故の余裕のなさ、地域の繋がりの希薄化といった社会的環境の変化、さらに、これまでボランティアで関わってきた人が高齢化し、世代交代も進んでいない現状などから、スポーツを支える存在の確保が難しくなっている。

今後を考えるポイントとして、一部に負担が偏るのではなく多くの人で役割を分担する、多様な関わり方を推奨するなど、支え方の工夫が必要だ。特に、日本では一つの競技のみに関わる人が多いが、異なる競技も運営するなど、多様な関わり方を進め、新たな発想が生まれる可能性を高めたい。さらに、日常的にスポーツに親しむことで、運営の意識も高まるという流れも大事にしたい」とお話しいただきました。

続いて、スポーツイベントでの組織体系、実際の業務についてご紹介いただきました。

また、スポーツの普及に向けた取り組みとして、従来は、「スポーツをする」人を増やすために、ジュニアの育成、指導者のレベルアップ、大会参加の機会の増加などを意識していたが、今後は、①競技を続けられる環境を整備する、②「スポーツを見る」人の増加に向けて、競技大会の魅力を高め、ファンとなるきっかけを用意する、③「スポーツを支える」人を増やすために、スポーツによる社会貢献の意識を高め、社会的に支持される取り組みを進めるなどのことが必要となる、とお話しいただきました。

最後に、森さんから、今後スポーツに関わる存在である中高生にメッセージをいただきました。

「自分の目標として、まずは2020年のオリンピック・パラリンピック大会を安全に運営し、成功に導くことがある。加えて、オリンピック・パラリンピックの成功をきっかけに、スポーツの、社会のプラットフォームとしての位置付けを高め、今後スポーツに関わり、支えていく人材を育てていきたい。

自分がスポーツを支える世界に身を置くようになったのも、社会で役立つ自分でありたいと願っていた中で、陸上競技連盟のオファーと周囲の勧めがあり、最終的には、スポーツに恩返ししたいという思いから決断した。

社会で活躍する人の特徴として、素直で前向きな意識と情熱を持ち、さまざまな経験と出会いを大切にしていることがある。ぜひこうした点を心かげてほしい。

また、何かを判断し、決定する立場となると、自分の下した判断に否定的な反応を示す人がいて、時に孤独を強く感じる。そんなとき、支えとなってくれるのは、若いときからの友人である。中高時代の友人の持つ意味を認識してほしい。

さらに、今後社会で活躍していくには、一つのことを突き詰め、極める中で身につく力と、多種多様な経験を持ち、柔軟な考え方を持てる力とを併せ持つことが重要になると自分は考えている」とお話しいただきました。

話の締めくくりとして、「自分がこのような形で、スポーツに、オリンピック・パラリンピックに関わるとは、10年前、20年前には思いもよらなかった。だからこそ、きみたちに『あり得るかもしれない人生』ということばを贈りたい。人生にはさまざまな可能性がある。そんな意識も持ちながら、今後を過ごしてほしい」とエールを送っていただきました。

生徒からの質問として、「森さんが陸上で取り組んでいた種目は?」「森さんや同期の人たちは陸上競技で大活躍したと聞いた。活躍できたのはなぜか。どんな練習をしていたのか」といった陸上競技に関わるものと、「スポーツのビッグイベントでは経済効果も話題にはなるが、ボランティア精神に基づく貢献が欠かせないと聞く。実情はどうか」「イベントが開催され、盛り上がりを見せた競技も、しばらくすると熱が冷めてしまうと感じる。この点をどう考えているか」など、スポーツを支えることへの関心からの質問もありました。森さんから、「的確で鋭い質問があり、意識の高さが感じられて嬉しかった」とのおことばもいただきました。

参加した生徒の感想です。

・普段、直接お話を聞く機会のない、五輪大会の組織委員会の方のお話を聞いてみたいと思い、参加しました。実際に組織委員会で働いている方から生のお話を聞け、大変刺激になりました。われわれの質問に真摯にお答えいただき、ありがとうございました。(高2)

・オリンピックに興味がありましたし、一度“大学で研究してみませんか”の企画に参加してみたいと思っていたので、参加しました。森先生のような、スポーツに関わる仕事をしている人がいると実感できましたし、どのような展開の中でこの仕事に就いたのかを教えていただき、参考にしたいと思いました。スポーツはプレイするだけではないことがよくわかりました。とても興味深いお話で、楽しく聴くことができました。(高2)

・校内でお話をうかがうことができ、参加しやすかったです。スポーツに関わる分野やその人数、大会のことなど、幅広くお話しいただき、将来、スポーツにどのように関わることができるのか、理解できたように思います。また、心の支えになったり、強みにできたりするお話も聞けて、参加して良かったと思いました。自分は、選手としてスポーツに関わることは無理ですが、将来何らかの形で関わりたいとぼんやり思っていたので、大変参考になりました。お忙しい中お越しいただき、ありがとうございました。(高2)

・将来の選択肢として、オリンピックに関わることも考えていたので、ぜひお話を聞きたいと思い、参加しました。森さんが若い頃からオリンピックに関わっていたわけではないと聞き、正直驚きました。オリンピックだけでなく、スポーツ全般に関わることの意義についてもお話しいただき、自分の価値観が変わったように思います。僕も将来、何らかの形でスポーツに関わろうと思います。貴重なお話、ありがとうございました。(高2)

・陸上部のOBの方からのお話でしたし、将来の展望が広がるのではと思い、参加しました。お話はオリンピックに関する専門的な内容が多く、組織などについて学べて良かったと思いました。また、一つのことをずっと続けることが大事だと思っていましたが、途中で切り替えるという選択によって成功することもあるとわかり、大変参考になりました。来年は高3で受験なので、オリンピックを全力で楽しめるかはわかりませんが、できる範囲で精一杯楽しみたいと思っています。オリンピック、今から楽しみです。(高2)

・来年、東京でオリンピックが開催されるため、運営側はどんな仕事をしているかに興味を持ち、また、スポーツに関わる仕事について知りたかったので、参加しました。組織委員会の活動は、単なる実行委員会とは違い、どうすれば人々がスポーツに関心を持つのかなど、社会の深いところまで考えた上で運営していることを知り、勉強になりました。スポーツに関わる仕事においても、ただスポーツを楽しむだけでなく、選手へのサービス、ビジネスとしての収益など、さまざまなことを考え、進めていく必要があると実感できました。貴重なお話を教えていただき、ありがとうございました。(中3)

 

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