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中3LHR企画 対談講演『作家の眼 文学のことば』~直木賞作家、木内昇さんをお迎えして

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対談講演『作家の眼 文学のことば』~直木賞作家、木内昇さんをお迎えして

対話が必要な場所で、対話のことばが失われ、多くの犠牲が生まれている。そんな今、「新しい対話」が始められないものか。世界中でそうした声が広がってきています。
どうしたらそんな対話のことばを生み出していけるのか。それについて学び考える機会として、2月14日に中学三年生のL.H.R.企画で、直木賞作家の木内昇さんをお迎えして『作家の眼 文学のことば』というテーマで対談形式での講演会をおこないました。対談相手の武田裕藝さんは桐朋56期卒業生で、現在読売新聞文化欄を担当しておられ、新聞記者のインタビューが実際どんなふうに行われるかも知ることができるというユニークな対談講演となりました。

事前に国語の授業で、木内昇さんの短編集『茗荷谷の猫』所収の「庄助さん」「てのひら」の二編を読み、その作者の方とお話しするという新たな試みでしたが、木内さんも中学生の学年全員を前に話されるのは初めてとのことでした。
木内さんからは先ず、自分が本好きになったのは遅く、本に携わる仕事をしたいとは思っていたものの、小説家になったのは志望してではなく偶然だったと自己紹介されました。小説家の仕事については、作者である自分自身にも登場人物がどういう人物かわからないからこそ書いてわかりたいという思いがモチベーションになっていることや、人の内面を描写するのではなく、身体の動きを描いていくうちにその人物がどういう人物なのかわかってくることのおもしろさ、時間をかけて丁寧に動きを見続けていくことの大切さなどが語られました。また、「小説を書くとき、自分の斜め少し後ろにもう一人の自分を置きながら、作品世界や登場人物を見ている。それは生きていくうえでも大事なことではないか」というような、書くことと生きることとのつながりについて深く掘り下げる話がされました。
後半は、「どのような小説がすぐれた小説だと思いますか」というような生徒からのさまざまな質問に、木内さんと武田さんが直接答えてくださり、活気ある対話の場がうまれました。

講演の最後に木内さんは、「人生においてさまざまな困難にぶつかることがあるけれど、そんなときこそ小説を手に取ってみてほしい。困難を特定の誰かだけのせいにし他責の念にとらわれて自分の人生を失うことのないように、また、自責の念に縛りつけられてしまうこともないようにして、自分の人生を自分のものとして生きていってほしい。」というメッセージを贈られました。
文学のことばでの対談と、一人ひとりとの直接の対話を通して、自分自身の人生と自分たちの「新しい未来」をどう生み出していくかについて思索を深める場をつくってくださった木内昇さん、武田裕藝さん、ほんとうにありがとうございました。
(文責 岩﨑)