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大学で研究してみませんか 海洋研究開発機構訪問

TOHO Today高校

進路企画として行っている「大学で研究してみませんか」。12月17日(月)に、横須賀市にある海洋研究開発機構を訪れ、施設を見学した後、桐朋高等学校卒業で、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球内部物質循環研究分野の主任研究員である羽生毅先生の研究室を訪問しました。参加したのは、高校2年生2名、高校1年生4名、中学2年生1名の計7名です。

まず、海洋研究開発機構の施設についてご紹介いただきました。海洋研究開発機構は「海から地球を解き明かす」ことを目的として、地球環境・地震・地球内部の解析・深海生物・海底資源など、さまざまな分野での研究が行われています。

続いて、潜水調査船を見学しました。「しんかい6500」は、深海6、500mまで潜ることができる潜水調査船で、有人での潜水調査ができる船は世界に7隻しかありません。見学をした日は、メインテナンスの関係で、船のカバーを外した状態であり、船の構造を見ることができました。

 

研究者、ドライバーの3人が乗り込むコックピットの大きさ、調査後深海から浮上する際に使う浮力材が船体内にはめ込まれている様子など、普段は見ることのできないものも見学できました。

さらに、深海巡航探査機「うらしま」も見学しました。

 

「うらしま」は無人の探査機で、機体内蔵のコンピュータに運行のシナリオを設定することで自力で航行できます。そのため、船舶よりも海底に近いところで探査を行えるので、たいへん解像度の高い海底地形のデータを取得できます。実際に、船舶による海底地形図と、「うらしま」のを比較する映像もあり、「うらしま」の力を実感しました。

その後、「しんかい6500」や「うらしま」の母船である「よこすか」が停泊中だったので、参加者全員での記念写真を撮りました。

 

続いて、水圧に関する実験を見学しました。水圧は、深さに比例して大きくなり、水深1000mでは100気圧になります。ちなみに、深海は、一般的に水深200m以上を指すそうです。実験では、発泡スチロールでできたカップ麺の容器に水圧をかけ、水圧の大きさにより、カップ麺の容器が圧縮されていく様子を見学しました。

 

興味深かったのは、圧縮されるのですが、書かれている文字が潰れることはなく、読むことができることです。水圧は、各部に均等にかかるので、縮み方が均一になるのだそうです。水深1000mでの100気圧ともなると、容器は高さが半分ほどにまでなりました。

 

この施設には高圧水槽があり、ロボットや機械が深海でもちゃんと使えるのかを実験で確かめているそうです。

午前中の最後には、海洋科学技術館を見学し、深海生物の展示、深海6500の実物大の模型のある部屋で、

 

深海6500のコックピットの中に入って大きさを体感することもできました。

午後には、羽生先生にご案内いただき、研究室・実験室の見学をしました。

まず、羽生先生の研究内容を教えていただきました。羽生先生の研究は地球内部での物質循環を対象としていて、地球内部の物質が現れる場としての火山を基に、物質の成分を調査し、その成り立ちを解明しているとのことです。実地調査では、火山に登っての岩石採取だけでなく、深海6500に乗り込み、海の底にあるマグマが固まってできた岩石を採取することもあるそうです。

採取した石は、その化学組成を調査することで、地球の成り立ちを解き明かすことができるそうです。化学組成の調査では、全岩分析と局所分析の2種類があります。全岩分析は、岩全体の化学組成を分析します。具体的には、石を粉々にしてどういう元素が入っているのかを細かく確認します。その中で、同じ元素ではあるが、中性子の数の異なる同位体の比率を調べることで、地球の過去において何があったのかも知ることができるそうです。一方、局所分析では、岩石を薄くスライスして、顕微鏡で分析すると教えていただきました。

その後、同位体分析を行うクリーンルームを体験しました。

 

クリーンルームとは、空気の汚れを取り除くことで、不純物の混入のない正確な調査、研究ができる部屋です。研究として高い評価を受けられるかは、どこまで不純物を取り除くことができるかによるとのことです。そのため、JAMSTECでは、空気中の埃だけでなく、研究に使う蒸留水も徹底して不純物を取り除く、実験の作業も人間ではなく機械が行うことで、埃を減らしているそうです。

続いて、クリーンルームで分離した元素の同位体を分析する質量分析計を見学し、分析の仕組みをご紹介いただきました。

岩石カッターを見学したあと、局所分析についてご紹介いただき、メルト包有物(マグマ中で結晶化する際、結晶内に取り残された揮発性物質)を顕微鏡で観察しました。

 

羽生先生は、このメルト包有物を基に、地球内部のマグマやマントルについて調査・研究をなさっているとのことでした。顕微鏡で観察するような小さなものから、地球内部の循環を研究できることに驚きました。

参加した生徒の感想です。

・夏休みにもこの催しに参加したので気軽に参加できました。特殊な研究設備を多く保有しているJAMSTECに興味も持ったのですが、実際に現地に行ってみると、研究所の規模が想定以上で驚きました。「しんかい」などの潜水艇や実験装置、岩石の試料などについて、詳しい解説を聞きながら見学できたので、理解を深めることができました。ちょうど無機化学を学んだばかりだったので、クリーンルーム内での説明がとても興味深く感じられました。貴重な経験をありがとうございました。(高2)

・11月に行われた、高校2年対象の、在校生卒業生懇談会で、大学の先生方から研究に関する話をいろいろ聞き、「研究職」とはどういう職業なのかを知りたいと思っていました。また、今回見学する研究所が自分が学びたい内容に関連すると思ったので、参加しました。研究職とは、ひたすら研究所に籠もって研究するだけと思っていましたが、深い海に潜ったり、海外に石を採取に行ったりといったアクティブな活動もあるのだとわかりました。さらに、研究は、一人で進めるのではなく、チームで対応することも実感できました。加えて、研究の成果が、地球環境の改善に繋がる可能性があることも認識でき、研究の奥深さ、やりがいを知りました。自分のなりたい職業の幅が広がる、面白い企画に参加でき、大変良かったです。ありがとうございました。(高2)

・地球科学に興味があり、実際の研究所などを見てみたいと思って参加しました。僕はまだ中2なので、よくわからない点も正直あったのですが、水圧の実験や、顕微鏡で実際に研究された物を見ることでさまざま発見がありました。海洋での研究を詳しく知ることができてたいへん良かったです。(中2)