TOHO Today - 教員ブログ -

2026年度 高校入学式が挙行されました

TOHO Today高校

さる4月8日(水)に高校入学式が行われ、83期高校1年生313名が入学しました。

原口校長から新入生に向け送られた「校長の言葉」をご紹介いたします。

ここ国立も桜をはじめ、春を彩るさまざまな花が咲き誇り、木々も柔らかに緑をまとう。まさに春爛漫といった言葉がぴったりの、美しく、色あざやかな景観となっています。

生命の輝きに充ちた本日、新入生の保護者の方々にご臨席を賜り、桐朋高等学校の入学式を挙行できますことを大変うれしく、ありがたく感じております。

新入生のみなさん、入学おめでとう。高校生としての第一歩を踏み出しました。今、どんな気持ちですか。少し大人びた気分を楽しみながら、晴れやかさ、誇らしさを感じている諸君が多いことと思います。

保護者の皆様方、ご子息の桐朋高等学校へのご入学、誠におめでとうございます。ご子息の健やかなるご成長に寄与すべく、第83期高1学年の教員ともども、精一杯取り組んでまいります。何とぞ私たちの桐朋教育に温かいご理解とご支援を賜りますよう、高いところからではございますが、心よりお願いを申し上げます。

さて、新入生のみなさん。1年ほど前に刊行された本、タイトルは『責任と物語』、著者は哲学者、戸谷洋志さんです。戸谷さんがこの本で解き明かそうとしたことは、責任を引き受けるとは、どのようにして可能となるのか。このテーマを考える上で取り上げたのが、サン=テグジュペリの『星の王子さま』。新入生のみなさんもきっと目を通したことがあるのだと思います。簡単にあらすじを紹介します。

「砂漠で不時着したパイロットの前に現れた王子さま。王子さまはもともと小さな星に住んでいて一輪のバラと暮らしていました。そのバラは美しく、香しく、心惹かれる存在なんですが、なかなかの見栄っ張りでわがまま者。いつも王子さまに嫌みを言っては、責め立てます。バラのそんなふるまいに嫌気が差した王子さま。バラを置き去りにして、自分の星を出ます。いくつかの星を渡り歩き、地球にやってきた王子さまは衝撃的な光景に出くわします。5千本のバラが咲き誇っているのを目の当たりにして、自分の星のバラが無数に存在するものの一つに過ぎないと痛感します。そんな時、出会ったのが一匹のキツネ。キツネは王子さまにこう話します。『きみがオレと仲良しになると、きみとオレは互いになくてはならない存在になる。きみはオレにとって世界でたった一人の人間になるし、オレはきみにとって世界でたった一匹のキツネになる』。自分の星のバラもかけがえのない存在だと気付く王子さま。さらに、キツネにこう言われます。『きみは仲良くなったものに対し、いつだって責任がある』。この言葉を心に刻む王子さまは、バラを置き去りにしたバラへの責任を何度も口にし、星に帰ろうとします。

戸谷さん、こう問題提起をします。「なぜ王子さまは、バラへの責任を引き受けたのか?」。バラに意地悪され、バラと一緒にいることに苦痛を感じていた王子さま。バラを置き去りにした責任はバラにあるのであって、王子さまにはないと、そう考えることもできるはず

です。でも、王子さまはそうした考えを取らず、自らの過ちを認め、責任を引き受けようとした。はたして、その根底に何があるのか。戸谷さん、その理由を探ろうと、さまざまな哲学者の責任に関する思索を辿り、一冊の本を書き上げます。

戸谷さんの思考のプロセス、新入生のみなさんにぜひ、この本『責任と物語』を手に取り、読み解いてほしいと願っていますが、少しだけ紹介します。ポイントに挙げたのが、自分自身への解釈をもとに、自らのアイデンティティを理解するための物語。どのような経験を重ね、何を大切にしてきたからこそ、今の自分となったのか。人はそれぞれ、自分なりの物語を持っているし、自己理解ってこの物語を基にしている。

ただし、この物語は固定したものではない。他者との出会いをはじめ、出合った出来事の意味を理解するたびに、訂正が加えられる。それでも、物語の核、中心となるものは守り抜かれ、その核がアイデンティティの中心となる。

『星の王子さま』で言えば、王子さまの物語の訂正と核は次のようになると、戸谷さん、説明しています。

「自分の星でバラの美しさに魅了され、大切にしながらも、かけがえのなさには思いが至っていない状態だったのですが、地球で無数のバラを目にし、自分の星のバラも特別な存在じゃないと、置き去りにした自分を肯定しようとするが、自身の存在意義が失われたかのように強いショックを受けることにもなる。この出来事を踏まえ、それまでの物語に揺らぎが生じます。そんな時、キツネの言葉でかけがえのないことの意味を理解し、置き去りにした過ちに気づいて、その責任を引き受けた。こうした日々においても、自分の星でバラに感じた美しさと、バラと過ごした時間の意義、王子さまにはこの二つの思いが変わらず心に残り続け、王子さまが、自身を理解する物語の核となった。だから、自らの責任として引き受けたのです」。戸谷さん、こう結論づけます。

その根拠に、王子さまのこの言葉を挙げています。「だれかが何百万の星の中の一つの星に咲く花を愛していたら、その人は星空を見上げるだけで、幸せになれる」。自らの責任を引き受けたからこそ、こうした思いを持つことができたと戸谷さんは指摘します。

新入生のみなさん。高校という時期は自立に向け、自分を高めていく時期です。自立の土台である自分。その自分を知ろう、理解しようと人は自分自身の物語を創り上げます。でも、日々のさまざまな出来事や人との出会いを通して、自らに対する理解が深まったり、それまでと異なる自分を目にしたりして、物語は何度も何度も訂正されます。そして、それこそが生きるということだし、成長の証なのだと思います。また、そんな訂正においても守り抜かれ、変わらない核、アイデンティティを認識することが自立の確かな土台となります。

新入生のみなさん、自主性に富み、個性豊かな桐朋の仲間たちと刺激に充ちた学校生活

を送りながら、自分自身の物語を何度も訂正しては創り上げる。そして、アイデンティティをいっそう確かなものとし、それを土台に大きく、たくましく成長してほしいと願っています。

自らの成長の土台となった経験の意味を理解し、そうした経験を次の世代も体験できるようにサポートを続けている小林亮介さん。小林さん、現在のように日本の高校生が海外の大学への進学を考える意識、発想がほとんどなかった17年前、ハーバード大学に進学。アメリカの大学で学んだこと、体験した意味を次の世代に伝えるべく、活動しています。

「学びにおいて、場が大きな役割を果たす」と語る小林さん。多様なバックグラウンドを持つ人々が集まり、人種や世代を超えた化学反応を伴う学びを創り出そうと、サマースクールを開いたり、下北沢にカレッジという名称の社会人や大学生、そして、高校生がともに暮らす寮を建て、謂わば24時間学び合える場を生み出したりと、自らの経験を次の世代に繋げるべく活動しています。

小林さんは経済雑誌「フォーブズ・ジャパン」が選出した「『世界を救う希望』100人、次代を担う新リーダーたち」に昨年選ばれています。その小林さん、グローバルについて、こう話しています。

「日本でグローバルというと、国籍や言語、人種の壁を意識しすぎなように感じます。本来グローバルって、こうした壁がなくなること。海外かどうかは関係ないし、必ずしも英語を使う必要もない。自分と異なる多様な人たちと関わりを持つ中、自分の生まれた地域や教育環境にかかわらず、自分のやりたいこと、進みたい方向へ自由に進む生き方を見つけられることこそ、グローバルだと考えます。グローバルな人に求められる資質は、若いころから自分と向き合う機会を持ち、自分の好きなこと、したいこととは何かという点に、しっかり真摯に向き合えることだと考えています」

新入生のみなさん。小林さんは本校の卒業生です。以前、桐朋での講演会で桐朋の魅力について、こう話してくれました。

「勉強でもスポーツでも、絶対勝てないと思える友人がいた。だから、自分は自分らしくいなきゃと思うようになったんです。でも、自分らしくいるって、実は難しいこと。自分らしく過ごすには、自分の考えをきちんと整理しながら、何事も自分の頭で考える意識や姿勢が重要です。ぼくはこれを桐朋で身につけ、その後、大いに役立ちました。それと、桐朋の魅力って何より、多様な他者を認め合う気風だと思います。ゆるやかにお互いの違いを認め合う意義や魅力を理解できたことが、今取り組んでいることに自然と結びついていると感じます」

一人ひとりの個性や考え方を尊重し、それぞれの思いや意図を理解しようと関わりを持つ。こうした関係性があるからこそ自然体で過ごせるし、自分に自信が持てる。その結果、

桐朋生の特徴である個性の輝きが実現するのだと思います。

新入生のみなさん。改めまして、入学おめでとう。83期のみなさん一人ひとりが自分を深く知ることで自らを創り上げ、そうしたみなさん同士が積極的に関わることで、どんな桐朋らしいグローバルが生まれるのか。大いに期待していますし、楽しみにしています。高校での3年間を一緒に実り豊かなものにしていきましょう。終わります。