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高1 学年の日『男子校で妊娠・出産について考える』

11
Nov
13

さる10月16日(水)に高1学年行事「学年の日」が行われました。「学年の日」とは、毎年の高一学年が主体となり何らかの文化的行事を企画するもので、毎年異なる様々な内容の行事が執り行われています。今年は「男子校で妊娠・出産について考える」と題し、性、妊娠・出産、そして育児について学習する機会を持ちました。午前中は、東京都助産師会より7名の助産師の方々にご来校いただき、「妊娠」「出産」といったことをテーマに各クラスで講演会をしていただきました。午後のセッションでは、助産師会を通じてお集まりいただいたお母さん方や、近隣にお住いのお母さん方にご自身のお子さんを連れてきていただき、生徒が実際に赤ちゃんとふれあいの機会を持つ交流会を開きました。

桐朋という、女性が圧倒的に少ない環境で日々を過ごす中、馴染みのないテーマ設定に最初は戸惑っていた生徒諸君でしたが、事前学習を重ねる中で、徐々に身近な話題・自身の問題として捉えられるようになっていきました。行事後の感想では

「女性のことをもっと理解をしていくべきだと思った」

「以前よりは少しオープンな形で性について家族と話すことができるようになった」

「自分もあのように可愛がってもらって、ここまで育ってきたということを再認識した」

「親孝行をしたいと思った」

などといったコメントが多くみられました。以下に、事前学習から当日までの様子、そして生徒のコメントに加え、赤ちゃんを連れてきてくれたお母さん方のコメントを紹介いたします。


事前学習

事前学習では、映像教材として助産師を特集した際の『プロフェッショナル』を視聴しました。また、本校家庭科教員の講義を聴きました。自身の妊娠・出産のときのエピソードや写真などを紹介しながらの講義でしたので、生徒諸君は興味深く聴けたようです。さらに生徒は、各個人で何らかのテーマを設定し、調べ学習をしました。そして最後に事前学習のまとめとして、ドキュメンタリー映画『うまれる』を鑑賞しました。映画の中では、それぞれに異なる問題(虐待を受けて育った夫婦、障害を抱えた子どもをもつ夫婦、死産を経験した夫婦、不妊治療に取り組む夫婦)を抱えた実際の4組のカップルの様子が描かれており、生徒にとっては大変印象深い作品であったようです。


当日

AMセッション:助産師の講演会 「妊娠・出産に立ち会う中で~命の大切さ~」

まずは事前学習の一環で観た『うまれる』についての感想を述べ合い、ディスカッションもしました。「(父)親になるということの意味」や「親は子をなぜ愛することができるのか(または中にはそうではないケースもあるのか)」といった点に話題が集まっていたようでした。

その後は、助産師さんの講演を各クラスで聞きました。出産という、命を迎える瞬間に日々立ち会われている「助産師」という職業をされている方々だからこそいただける貴重なお話の数々を、生徒たちは真剣な表情で聴いていました。出産の苦しみ・大変さ、そして喜びについてお話をいただく中で、命の尊さや生まれてきたことの奇跡、そして自身の親への感謝の気持ちを新たにしている生徒が多かったようです。


PMセッション:赤ちゃんとの交流会~育児を体験する~

今回の行事の趣旨にご賛同いただいたお母さん方にご自身の赤ちゃんを連れてきてもらい、本物の赤ちゃんとふれあう機会を持ちました。各クラスに2~3名の赤ちゃんに来てもらいました。それぞれのお母さんから妊娠・出産時のエピソードを伺ったり、名前の由来や好きな遊びなどを教えていただきました。赤ちゃんの月齢は、大きくても1歳にやっとなったばかりといったところ。中にはまだ生後2か月の子もいました。

高校一年生の生徒諸君にとって、普段身近に赤ちゃんと触れ合う機会というのはなかなかないものです。慣れない所作の連続に悪戦苦闘しながらも、赤ちゃんを慎重に抱っこさせてもらい、泣いてしまった子を懸命にあやす姿は、大変微笑ましいもので、「頼もしいお兄さん」、はたまた「優しいお父さん」の顔をのぞかせていたように感じました。中には、白湯を飲ませる体験をさせてもらったり、おむつ替えをさせてもらったりした生徒もいたようです。


以下、生徒のコメントを紹介します。

A君

今日の学年の日を通して、お母さんに対してもっと感謝をしないといけないな、と強く感じました。事前学習から当日まで、様々な資料を見て、貴重なお話を聞いたことで、出産はまさしく命がけであり、さらには命がけで出産した後も長い育児がある、ということを知り、母親になるということはとても大変で覚悟のいることなのだと感じました。また、映画「生まれる」や助産師の方のお話を聞き、自分が産むわけではない男は、父親という自覚が産まれるまでわきにくいのだな、と思いました。しかし、今回の学年の日で学んだことを生かして、自分が父親になるときは、ちゃんと自覚を持って奥さんの手助けをしていきたいです。助産師さんのお話の中で印象に残ったのは、「なんでもほぼ完璧がよい」ということと「自分の居場所を見つけるとよい」という2つのことです。僕は割と完璧を目指すタイプだったので、「ほぼ完璧」の方がよい、というのは目から鱗でした。「完璧」を何事にも求めていると、息切れしてしまい、結果的に中途半端になってしまうので、これからもっと肩の力を抜いて、何事もこなしていきたいです。また、「自分の居場所」があればたいていのことはどうにかなると思うので、「自分の居場所」を大切にしていきたいです。今まで僕は、子供はほぼ100%産まれてくるものだと思っていましたが、それは日本の医療がとてもレベルが高いものだから、ということを知り驚きました。どこか「出産はそこまで大変ではないだろう」という思いがあったのですが、学年の日を通して子供が産まれるのは本当に奇跡なのだなと思いました。最後に、男子校でこのような経験ができたのは貴重だと思うので、これからしっかりと生かしていきたいです。

 

B君

今回の「学年の日」は僕にとって忘れられない一日になった。事前学習では寝る間も惜しんで妊婦さんのサポートをする助産師さんがいるということを知って、この仕事をずっと続けられるというのはすごいなと思い、中山めぐみ先生の話では、実際に出産を体験したからこそ言える出産の痛みや、妊婦さんが妊娠中、とても苦労しているんだということがとてもよくわかりました。映画『うまれる』では、様々な夫婦の姿が描かれていて、出産するということ、子どもを育てるというのが、どういうことなのかなどがとても具体的に描かれ、夫婦が抱える悩みもありのまま伝えられていたので、自分も将来そういったことを体験する時が来るのかな…と感じました。

そして、当日、助産師さんが来てくださって、僕たちの疑問になるべく多く答えてくださった。僕は兄弟がおらず一人っ子なこともあり、あまりこのような話は知らないことが多く、興味を持った。

最後の赤ちゃんとの交流会はとても新鮮だった。テレビでは赤ちゃんとを見ることはあっても、あそこまで近くで本物の赤ちゃんを見たことがなかったので、わくわくした。抱っこして近くで見るととてもかわいかった。なぜ親が子どもを大切にするのかがすこしわかったような気がした。昔、自分もあんな風だったのかと思うと少し笑ってしまった。

今回、「学年の日」が無かったら、僕が生まれて数カ月しかたっていない赤ちゃんと交流することはできなかったと思う。貴重な体験ができたので、とてもよい一日になりました。

 

C君

実際に助産師さんが来て話をしてくれるというのは、最初の方に話されていた通り、僕たち男子高校生にとってとても貴重であり、滅多にないことだと感じた。助産師さんの映像を見た時から、助産師という職業は数多くの妊婦さんたちに自らの時間を多く削って向かい合っていくものだというイメージが強くついていたので最近はちゃんと寝る時間を取れていると聞いた時は何か安心した。妊婦に真剣に対応するということがどれほど大変な事かは妊娠・出産する際に何が起きるか、何をすべきかという今日の話でよく分かった。というのも、流産であったり妊娠する以前の話に始まり、望まずに妊娠してしまい高い金を払って中絶せざるを得なかったケース、僕らと同じような年齢で家庭を築くことを望んだりなど、実際に経験されたケースや事例を用いて多くの問題点や難所にまで話があった。こうした妊娠や流産、女性の身体にまつわる事だけでなく、出産に立ち会う際に男側はどうあるべきなのかなど、一見今は関係のないような話でも将来経験するかもしれない事についても色んな話があって他人事ではなくいくつかは自らも体験することなのかと感じた。

赤ちゃんと触れ合う機会をもったのは初めてで何か小動物を見ているような気がしたのと共に、簡単に傷つけてしまいそうでとても不安になった。実際、自分の体の上にのせてみるとより一層なんだか人ではない何か別の小さな生き物のように感じた。ビデオや助産師さんのお話しであったように、妊娠してから出産までどのような危険やリスクが伴うか、出産の後も育児があったりと大変なことが多く重なる妊娠・出産だけれど、その後にあれほど小さく儚い命を手にするのであればしっかりと、自分であれば男として真剣に向き合っていかなければならないなと感じた。

 

D君

助産師さんや赤ちゃんを連れてきてくれたお母さんたちに感謝したいです。とてもためになったと思います。テーマを聞いて僕が最初に思ったことは「つまらなそう」「だるい」といったものでした。正直なところ,子どもが欲しいとは思っていたにもかかわらず,妊娠,出産といったものには点で興味がありませんでした。初めにビデオを見たときもそれは変わりませんでした。しかし,調べ学習や,4回の事前学習の中で徐々に僕の中で関心というものが芽生えてきました。そこで感じたことは,妊娠,出産が想像以上に大変であるということ。また,自分もそのように生まれてきたのかという実感でした。今まで,このようなことを考えていなかったということが,何か不思議に思えてきました。また,自分が将来父親になり,ビデオの中のようなことを経験するかもしれないと真剣に考えたのも今回が初めてでした。映画「生まれる」もリアリティが高く,とても興味深いものでした。

当日は,まず助産師の方の話を聞くことになりました。助産師さんは話が上手いように感じました。想像以上に関わりのある話も多く,楽しむことができました。少し聞くのが恥ずかしいような話も快く聞くことができました。本当に頼りになる存在なのだなと感じました。午後は赤ちゃんとの交流会でしたが,想像以上のかわいさにびっくりしました。自分も昔あのような姿だったとは想像しがたいです。泣いている姿も愛らしかったです。赤ちゃんを抱いて,改めて赤ちゃんが欲しいと思うようになりました。将来結婚して子供を持つというのは人生においての1つの大きな目標となりそうです。あと,赤ちゃんをふだん犬を抱いているように抱いたとき,泣き止んでくれたのがとてもうれしかったです。赤ちゃんの一番かわいいところは間違いなく手だと思います。とても良い勉強になったし,いい経験になったと思います。

 

E君

僕が抱っこさせてもらった赤ちゃんは、生後3か月ぐらいの赤ちゃんで、とてもかわいかったです。僕は姉弟や親戚の中では一番下なので、赤ちゃんを間近で見たことがほとんどなくて、どうしたらいいのか分かりませんでした。どれぐらいの力で触っていいのか分からなくて、とてもとまどいました。実際に抱っこすると、とても小さくて、軽いのか重いのかよく分からない不思議な感じでした。でも自分の腕の中でちゃんと動いていて、何よりも温かかったです。赤ちゃんに指を握ってもらえました。やわらかくて、気持ちよかったです。肌はぷにぷに、すべすべで、これが赤ちゃんなんだと思いました。

僕は子どもがあまり得意ではなく、どちらかというと嫌いな方です。それは僕が末っ子として育ったからかもしれません。今日、赤ちゃんと間近にふれあって、とてもかわいいと感じました。しかし、実際に育てるとなると、泣いたり、わがままを言ったりして、とても大変で自分にはできないと思います。自分の子どもだったら、なんでもかわいいと感じて、育てられるのでしょうか?僕には分りません。将来、家庭を持ちたいとは思っています。それは今の家族との生活が幸せだからです。でも、自分が親になる想像が全くできないので結構、不安です。

今回、学年の日を通じて、赤ちゃんの誕生、それから親になるということについても学べてよかったです。自分の将来について、もっとしっかり考えようと思いました。

 


最後に、赤ちゃんを連れてきてくださったお母さん方のコメントを紹介します。

Aさん

はじめはためらいがちだった生徒さん達が徐々に慣れてきて、たくさんかわいがってくれる様子が印象的でした。男の子も機会が与えられれば、赤ちゃんとの触れ合いをしてみたいのだと感じました。私にとっては初めての男の子育児なので、将来像がなかなか想像できなかったのですが、男子高校生もかわいいなと感じ、楽しみになりました。高校生達が赤ちゃんを抱っこして何を感じたのか知りたいと思っています。触れ合う中で、映画『うまれる』について話をしてくれる子もいました。男の子達にとって、また性別に関わらず高校生にとって、他人事になりそうな妊娠・出産というテーマについて扱うことは大切だなと思いました。今回の触れ合いが、生徒さん達が何かを考えるきっかけになってくれたら嬉しいなと思います。かわいがってもらい、ありがとうございました。お疲れでした。

 

Bさん

昨日はとても良い経験をさせていただき、ありがとうございました。娘は予想通り抱っこしてもらう時はぐずりましたが、それ以外はリラックスしていて普段通りの姿を見ていただけたかなと思います。生徒さんや先生方が「可愛い!」「(ズリ這いが)速い!すごい!」と良いリアクションをして下さったので、娘もご満悦の様子でした。

抱っこしたいと名乗り出てくれた子、泣いて熱くなった頭を「すごい!熱い!」と触ってくれた子、手足を触って「やわらかい」と優しい顔をしてくれた子、高校生の男の子がこんなにキラキラした素直な笑顔をしてくれるのかと、私が感動してしまいました。妊娠・出産の体験を話した時も、皆さん顔を上げて熱心に聞いて下さいました。きっとこれからの将来に向けて、そして身近な家族や自分の親に向けて、道や乗り物で出会う妊婦さんや子連れさんに向けて、今までには無かった新しい感情が生まれたのではないかな♪ 短時間の触れ合いがきっと生徒さんの心に、言葉にはならなくても何かしらの衝撃を与えたのではないかな♬そうだといいなあ!と思っています。先生方も色々とお気遣い下さいました。性教育にこんなに理解と熱意のある先生方が、世の中にたくさんいたらいいなと思いました。またこのような機会があったらぜひ参加してみたいです。ありがとうございました!

 

Cさん

今回、参加させて頂き、こちらがよい思い出となりました。とてもステキな場所(緑とスタイリッシュな雰囲気)で、優しいお兄ちゃん達に囲まれ、大切に触れられ、注目された体験は娘にとって不思議で好奇心いっぱいのひとときになったと思います。

この企画のおさそいを受け、「男子に赤ちゃん!」ぜひ参加したいと思いました。命の尊さは、自分が大切にされた経験を通して、人を大切に尊ぶことができると思います。生徒さんの様子から、ご家族にも先生方からも、大切にされ育ててもらった子達だなあ、感じました。実際に赤ちゃんと過ごしたひとときは、(今後いつか)その思いを忘れかけたときのストッパー(安定剤)になるのでは?と思います。自分がイヤになったり、全てうまくいかない、自分なんて!と思ったときに、ぬくもりを思い出してほしいです。また女性と触れ合うときに、その先の命にもつながっているという自覚を男性の立場で持ってほしいと思います。

抱っこには、ずっと娘は泣いていて、「自分は赤ちゃんに好かれていない」とマイナスの印象を持ってしまった生徒さんがいないか、気になりました。無表情でコトバのない生徒さんも、それぞれに感じているものがあると思います。みなさん。とても大切に娘に触れて下さいました。その様子は母として安心して抱っこして頂けました(泣いているので、私も少し焦りましたが、泣く原因や抱っこの仕方など、助産師さんがその場で仕切って見せてあげるとよかったかな?と思います。泣いていたので、母の私に託して下さいましたが、抱き方などもっと教えてあげられたり、生徒さんの不安要素をもっと減らすことはできたのでは?と、後になって思いました)。

また、生徒さんの個別テーマ研究の内容や、事前学習を経ての、赤ちゃんとの触れ合いに後の思いなど、聞いてみたいなと思いました。

最後に、学校の入り口から、お見送りまで、先生やみなさんに大変丁寧に接して頂き、ありがとうございました。案内してくれた3人の生徒さんとは、特に気さくに会話ができて楽しく安心しました。担任の先生がお写真を撮って下さり、可能であれば見たいなあと思います。

このような機会は、ぜひ続けて頂いて、高校生男子の立場で赤ちゃんとの触れ合いがその後に活きていくと嬉しいです。ありがとうございました。

 

生徒諸君へ。

今回の経験は、明日すぐに役立つ知識とはならなかったかもしれません。

でも、10年・15年後・20年後、自身が親になろうかという時に、

必ずや助けになることを学ぶことができた思います。

その時には、今回のことを思い出して、

パートナーとの関係づくり、そして育児に役立ててもらえたら嬉しいです。

 

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