お知らせ

自律した学習者を目指して

2020年5月8日

【自律した学習者とは】

休校期間が継続する中、皆さんはどのような毎日を過ごしているでしょうか。学習面への不安を感じている人も多いかもしれません。様々な相談を持ちかけてくる生徒がいる中で、私は、「君はきっと大丈夫だよ。」と声をかけることがあります。あるとき、卒業生から、「なぜ、先生は志望を叶えられる生徒が分かるんですか。」と尋ねられました。一言で答えるのは大変難しいのですが、あえて言葉にするなら、その生徒が「自律した学習者」になったと感じられる時、大丈夫だという確信につながっていきます。質問で言うと、教科の内容だけでなく、「自分はこのやり方でこのようにやってみたのだけれど、次にどの教材でどのように学べば良いですか。」など、実際にやってみた上での学習方法についての話題になっていくとき。自分のために自分で作成したテストを見せてもらうと、こちらが伝えたいエッセンスを上手に含んでいるとき。自己分析をきちんとして苦手分野に対して向き合っているとき。要するに、「今自分にとって何が必要なのか」を自分で考え、行動できるようになったとき、どんどん伸びていくのです。自ら考えられるのは、学習内容のみではありません。手応えを感じることができる生徒は、モチベーションを高める方法も工夫しています。学習方法で言うと、教科をかえてメリハリをつけ、50分やって10分休むというリズムも、集中力を持続するために効率的なものです。1日1日の積み重ねが、全体では大きなものとなります。学習の仕方を学ぶこと自体が大切な学習だと思います。

【現役生が苦戦するところは】

今年度の大学入試結果を分析すると、大学入学共通テストの前年で新傾向が含まれていたこともあり、大学入試センターから発表されたセンター試験の平均点では、英語・数学・国語の全ての科目で昨年度よりも下降し、全国的に苦戦した様子が窺えます。桐朋生についても、得意科目と苦手科目の得点差が生じてしまい、納得のいく結果を残せなかった者は少なくありませんでした。現役生と浪人生で比較した時、得意科目では現役生も浪人生にひけをとりませんが、苦手科目で現役生は浪人生に差をつけられてしまうことが多いものです。思考力を要する問われ方をしたとき、また、問われる角度が想定と異なったとき、十分に体得できている得意科目では自信を持って対応できても、苦手科目では不安な気持ちが高まり、不十分な理解であるが故に、大きな失点に結びついてしまいます。

苦手科目、さらに、苦手分野克服の鍵は、その分野を嫌わずに、その分野と友達になっていくこと、その分野と同じ時間を長く共有していくことだと思います。友達を作るとき、まず、相手の自己紹介に耳を傾け、相手の特性を理解するのではないでしょうか。学習で言うと、道具となる知識を身につけ、基礎となるルールを体得していくこと。単語・熟語や定義を覚え、文法や例題や資料を理解することなしに、その分野との対話は進みません。ここまでが、きっと辛抱強さが求められる作業になることでしょう。知識を使う段階になればしめたもの、この頃になると、少しずつその分野の面白さも味わえるようになっていくはずです。このように考えていくと、これは時間のかかることだと感じるでしょう。時間を自由にコントロールできる今がまさに絶好のチャンスですね。苦手だと決めつけて逃げてしまう前に、その分野が出てくるたびに毎回嫌な思いをするより、今ここで乗り越えておくと、それは自分にとっての大きな武器、得点源になっていきますよ。

【今、できることは】

郵送やロイロノートや映像授業、私達もできる限り学習の支援を工夫していきたいと考えています。是非、課題についてもやらされるからやるのではなく、なぜその課題をやるのか、その意味、メッセージを考えて前向きに取り組んでみて下さい。もちろん、課題だけで終わってはいけません。どのような予習、復習をし、今の学年までに学ぶべき内容を、先送りすることなく、その年のうちに定着させていくか、考えてみて下さい。無人島に何か1つだけを持っていくとしたら…、1日だけで帰ってこられるなら、漫画の1冊でも飽きずに過ごせるかもしれません。ただ、それが長期間にわたるとしたら、知的好奇心を刺激してみたくなりませんか。もちろん、問題集を解き進めてみるのも楽しい知的活動になるでしょう。そして、それだけでなく、未知の内容を解読していくのもきっと楽しいですよ。大学に進学すると、自らの力で専門書を読み進めていくことになり、苦労した分だけ、面白さも味わうことができます。予習に物怖じすることはありません。そのような意味で、教科書は当たり前に学べる書物のようで、入門書としては、かなり分かり易く工夫して書かれています。教科書をどんどん読み進めてみましょう。卒業生が書いた合格体験記や不合格体験記の中では、基礎・基本の重要性が繰り返し強調されています。入試演習に入ると、「教科書の章末問題とここまでは同じアプローチだから…」とか、「教科書に載っているグラフぐらい頭に入っているでしょ。だから、この図は…」とか、教科書を隅々まで極めていることが一つの前提になっていきます。教科書を軽視してしまっている人は、自主教材と共に、改めて教科書を学ぶ機会にしていきましょう。週ごとに区切り、この週が終わるまでには、この教科ではこのようなことをやっておきたいという目標を持っておくのも良いですね。もちろん、基礎固めができたら、発展的な内容を長い間じっくりと考え、試行錯誤してみるような経験もしてみて下さい。別解など、異なるアプローチを様々にイメージしていくことは、初見の問題に対して解法を選択していく能力など、底力を培ってくれますよ。

【進路について考えるきっかけを】

この期間に、自分の進路について考える機会を持ちましょう。まずは、自分が将来どのような職業に就きたいのか、大学でどのようなことを学びたいのか、じっくりと考えてみましょう。「このような学部に進むとこのようなことが学べるのか」ということなど、自分の興味のある分野について、視野を広げていくことから始めてみると良いですね。「夢ナビ」というサイトでは、関心ワードから、その言葉に関係する分野や講義を検索することができます。「宇宙」、「塩」、「ケーキ」など、思い浮かんだ単語を入力すると、意外な視点も含め、様々な研究分野を導き出すことができますよ。志望分野が明確になっている人は、関心のある大学のホームページをいくつか開いてみましょう。今の時代、各大学のホームページは充実していて、色々なことが分かります。大学の様子、行事、設備、入試の情報、そして、どのような専門分野のスタッフが充実していて、そこでは何を学べるのかということまで感じとれるかもしれません。講義内容のタイトルなどを見ても、何となく様子が分かるかもしれませんね。必ずしも自分が行きたいと思っている大学でなくても、丁寧な説明の中から、「このような分野に進むとこのようなことが学べるのか」ということを知るヒントになるかもしれません。その他にも、知り合いの先輩と連絡をとってみる機会などを作ってみても良いですね。自分の進路を切り拓くには、自分から行動していくことが大切です。

【自ら動くことで、気が付いていくこと】

そのようなことをしているうちに、だんだん今の自分にとって必要なことが見えてきますね。学習は、自分の視野を広げ、人間としての幅を広げ、よりよく生きていくことにつながっていくものです。何かを発見したり、奥深さや興味深さを感じたり、学習していく中には楽しいことがたくさんあります。その一方で、いざ自分の進路を切り拓こうというときにも、確かな学力が必要になってきますね。いわゆる「本気」になって受験勉強を始めた学生がまず青ざめるのは、やる気はあるのに、勉強が進まないことです。長文を読もうにも単語が分からない、応用問題を解こうにも何をしてよいか分からない、文章を書こうにもその論拠となる知識がないことなどです。結局、基盤となる知識や道具がなければ、そこに積み上げていくことはできないわけですね。だから、声を大にして言います。既習分野を全て、今のうちに確実に定着させましょう。誤解しないで下さい。あわてたり、難しいことをやろうとしたりする必要はまったくありません。教材を信じ、課題を大切にし、地に足の着いた学習をしていくことです。それが、これから先に大きな影響を及ぼしていきます。人それぞれ目標は異なると思いますが、毎日机に向かいましょう。そして、自分自身と対峙し、分からないところを見つけ、付箋を貼るなど、克服すべきところを洗い出しましょう。

【先輩達の体験記から】

志望を叶えた先輩達は、教科のバランスも良かった者が多く、自分にとっての「当たり前」を持っていました。「テスト勉強をきっかけに○○はその都度定着させておくのが当たり前」、「教科書や問題集の例題ぐらいはさらっと解けるようにしておくのが当たり前」、「○○までに、単語帳一冊ぐらい仕上げておくのが当たり前」など。どんな本が良いか…など、もちろん大切ですが、悩む前に、まずは学校で使っている吟味された教材をしっかり仕上げてみましょう。さらにゆとりがあって、書店で気に入った本を探してみても良いですが、とにかく1冊をやり通してみましょう。その上で他の本も眺めてみると、重複して出てくる単語や問題など、これは重要事項なのだなと見通せる目も養えるでしょう。細かいところも色々気になるかもしれませんが、そこで嫌になって挫折してしまうよりも、まずは全体をやり通し、その後で気になるところを掘り下げたり、繰り返してやりこんだりする中で定着させていきましょう。むやみに手を広げる必要はありません。100題の問題をただやった人より、10題の問題を確実に身につけ、使いこなせるようにした人の方が、入試演習をしたときに、問題の構造をきちんと理解することができ、伸びていくものです。1冊を自分のものにしていく姿勢が大切ですよ。

【今こそ、自分を振り返り、一歩踏み出すとき】

また、今の自分の生活をもう一度見つめ直してみて下さい。よく頑張って力をつけている者と、やらなければ…と心のどこかで気にしていても、その場の娯楽や忙しさに流されてしまい、結局納得のいく学習ができない状態でテストに臨み、テストが終わればそのまま…という状態になってしまっている者と、どんどん差が開いているように思います。気になっているだけで学習が進まないなんて、もったいないですね。やることをしっかりとやって、メリハリをつけて、様々なことに取り組めた方がどんなに気持ちの良いことでしょう。頑張っているからこそ疲れも生じることは理解しています。その中で、自分にとってどのような時間の使い方をすれば、継続することができ、きちんと吸収して定着させていくことができるのか、自分の学習のリズムを立て直すなら、今が大きな分岐点ですよ。慌ただしい学期中とは少し異なり、距離を置いて、客観的に自分の生活を見つめ直せるこの期間に、これからの自分の過ごし方をイメージし、学習習慣作りの目標を定められると良いですね。今頑張れたことが、今後目標を実現できる自信につながれば、なおのこと素晴らしいでしょう。

【志、いや高く】

もちろん、初めからすべてが思い通りに進むわけではありません。目標を定めてもそのうちの何割かしか実行できないことはよくあります。でも、大切なのは挑戦してみることです。「やらなかったからできなかっただけで、やればできるはず。」という逃げ道を作るのではなく、本気でやってみてうまくいかなかった時ほど、「では、どのように工夫すれば良いのか」と考えるきっかけになり、そんな中から少しずつ自分なりの道を切り拓いていくことができるようになるわけですね。志いや高く、目標は大きく持ちましょう。(これは、十分に全力を尽くしている高3生にかける言葉ですが、)目標通りに進められなくても、それはそれだけ大きな目標を立てた証拠なのです。

【自律した学習者になろう】

スポーツの世界でも、よく「ピンチはチャンス」と言いますね。ピンチを踏ん張って凌ぐと、その先にチャンスがやってくる。学期中は、受動的に授業に参加していても、周りと同じ空気を吸っていることについつい安心してしまうことがあるのではないでしょうか。でも、今は、自分でコントロールできるたくさんの時間を有しつつも、自分から学ぼうとしなければ、学びは進みませんね。「自律した学習者」になる最大のチャンスです。受験の世界で、「夏を制する者は受験を制す」と言いますが、今年の東京都には、夏休みのない夏が到来することでしょう。「今を制する者」が、「自律した学習者になれた者」が、人間的にも大きく成長して、志望を切り拓く力を身につけることを確信しています。

【皆さんと会える日を楽しみに】

学習、進路、読書、趣味のことなど、今やろうと思っていることは色々とあるのではないでしょうか。学期中とはまた少し違った時間を、有意義に活用しましょう。まとまって時間がとれるこの機会に、色々なことを感じたり、じっくりと考えたりしてみて下さい。どの学年であっても、毎年、長期休暇明けに会うと、心も身体も成長した様子を感じます。学校再開後に、希望に満ちた新学年の生徒達に、また、ひとまわりもふたまわりも成長した生徒達に、会えることを楽しみにしています。

進路指導部主任 三堀智弘