お知らせ

臨時休校に際しての校長からのメッセージ

2020年3月3日

桐朋生のみなさんへ

9年前の春、突如として発生した大きな地震によって、列島全体が大きな混乱と動揺の渦に巻き込まれました。余震と津波の恐怖、原発事故による放射能汚染の不安…。ガソリンスタンドは閉じ、様々な日用品・食料品が次々に店の棚から姿を消しました。
あの時、私たちは何よりも情報に飢えていました。原子力発電などはもともと、ごくわずかな科学者が高度に専門的な知識を独占しているものであり、メディアはこぞってそうした専門家の声を発信しました。その結果、世の中には正しいと思われる言葉の氾濫が生じ、人々は、たまたま見たテレビや、たまたま手に取った本の情報から、人によって違う正しさを信じるといった状況に陥ったのです。
そんな時、中村芳夫さん(当時経団連副会長・事務総長 5月11日東京新聞)、垣添忠生さん(国立がんセンター名誉総長 6月12日読売新聞)、山﨑晴雄さん(当時首都大学東京教授 11月9日東京新聞)といった桐朋の卒業生が次々に声を挙げ、混乱する社会のオピニオンリーダーとして、人々が歩き出すべき方向を指し示したのでした。「人の考えを本当に理解するためには、彼らの言葉ではなく、彼らの行動に注意を払え。」これは哲学者デカルトの言葉だそうです。言葉で何かを伝えようとする時、大切なのは、どのように単語を並べるかではなく、どのような姿勢を示すかという点です。桐朋の卒業生には、姿勢を伴った言葉を発することのできる方々がたくさんいらっしゃいます。
今、私たちの社会は新型コロナウィルスの脅威に直面しています。感染の実態について明確な説明もないまま、2月27日午後6時半、総理大臣から全国全ての小学校・中学校・高等学校・特別支援学校を臨時休校とするべく要請するというメッセージが発せられ、全国の教育現場はもとより、全ての家庭や職場に衝撃が走りました。それについての報道に時間が割かれるなか、同じ27日に、東京都医師会が緊急会見を開いたというニュースもありました。その会見で、桐朋OBでもある尾崎治夫東京都医師会会長が、PCR検査が必要だと現場の医師が判断したのに保健所から「受け入れられない」と言われるケースが相次いでいるとして、「医師が検査を望む場合はPCR検査が行えるような体制が確立されることを強く望む」と訴えておられました。
医師会のこうした訴えの背景には、医療現場の切迫した現実があるのでしょう。都内では、報じられている罹患者数以上に、新型コロナウィルス感染症がより広く蔓延する危険性のある段階に入っていると考えるべきだと思います。不要不急の外出を自粛するなどして蔓延のピークを遅らせ、医療機関のキャパシティを増やすことが大切だと、尾崎会長は強調されています。
残念ながら、私たちは今、それ以上の“正しいと信じられる”情報も、全員が納得できる明確な根拠も持ち得ません。そうかと言って、「こうすれば、学校現場での流行を防ぐことができる」という確実な手段もありません。そうしたなかで、児童生徒および教職員の健康を守り、新型コロナウィルス感染症の拡大を押し留めるという目的を最優先に考えて、私たちは3月2日からの臨時休校を決断するに至りました。
諸君の三学期の頑張りを、期末考査という形で反映させることができなかったことは、本当に申し訳なく思っています。また、諸君がそれぞれに生徒会・桐朋祭委員会あるいはクラブ活動の予定を立てて、意欲的に取り組もうと思っていたであろうことも、充分に理解しています。私たち教職員も、桐朋生の想いを受け止めながら、桐朋らしい発信を続け、諸君に語りかけていきたいと思っています。
全国の医療現場で、あるいは研究機関で、多くの卒業生がこの厄介なウィルスと闘っています。力をあわせて取り組んでいきましょう。

校長  片岡 哲郎

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