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大学で研究してみませんか 東京慈恵会医科大学訪問

12
Dec
7

進路企画として行っている「大学で研究してみませんか」。11月19日(月)から3日連続で行われた特別講義の最後として、夢のような「基礎医学の研究室訪問」が実現しました。

東京慈恵会医科大学では、桐朋高校の卒業生3名、桐朋女子高校の卒業生1名が基礎医学の分野の教授をなさっています。この方々の研究室に訪問し、研究内容をご教授いただきました。参加したのは、高校3年生5名、2年生1名、1年生1名の計7名です。

最初に、今回の研究室訪問を企画くださった、桐朋高校卒業で、形態学や進化学の研究をしている、解剖学講座の教授である岡部正隆先生に、東京慈恵会医科大学とその周りをご案内いただき、北里柴三郎や野口英世がいた伝染病研究所の跡地や、新設に向け工事が進んでいる大学病院の新外来棟などをご紹介いただきました。

その後、教室でお話を伺い、

「1人の医者を育てるには多くの費用がかかり、大学の授業料だけでなく国からの補助を受けて医学教育は行われている。だからこそ、医学の道に進む上で、国民のための医者であるという自覚を持つべきだ」とお話がありました。また、最近の医学部入試の話題では、筆記試験だけでなく面接や小論文が重視され、人間的に優れた人を選抜する意識が高まっていることも教えていただきました。
見学・体験では、遺伝子組換えマウスが管理されている部屋の見学、

高解像度で3次元での観察機能を持つ共焦点レーザー顕微鏡での観察を体験しました。

形態学・進化学に関する研究内容の一端を教えていただき、進化の過程で、水中にいる魚から陸上の動物へと移り変わる中で、どのような遺伝子の変化が体の形を変えたのかを解明する研究として、古生代から絶滅せずに生き残っている古代魚と陸上の動物のゲノムを比較することで進化の様子を調べたり、緑色蛍光タンパク質を用いて体の中の特定の細胞を光らせ、観察しやすくした遺伝子組換え魚を麻酔で眠らせ、生きている細胞を観察することで研究を進めたり、といった最新の研究スタイルをご紹介いただきました。

続いて、桐朋高校卒業で、薬理学講座の教授である籾山俊彦先生の研究室を訪れ、脳の神経細胞のシナプスによる情報伝達の仕組みを研究するために、マウスの脳をスライスし、それに電気的刺激を与えて電流の流れ方をコンピュータで解析する様子を見学しました。
研究に関するお話の中で「大学で学ぶには、『頭のいい人』ではなく『頭の強い人』であってほしい。『頭の強い人』はわからないことを頭の中に貯めておくことができる。これにより、その問題を何度も、継続的に考え続けることができる。そうした人が、研究を推し進めていけるのだ」と教えてくださいました。

続いて、桐朋女子高校卒業で、分子遺伝学の教授である玉利真由美先生からお話を伺いました。先生は、疾患と遺伝子の関係を解明して、癌やアレルギー疾患の原因を突き止め、治療方法や薬の開発に繋げる研究をなさっていて、特に、アレルギー研究10ヵ年戦略の策定に向け、重症アレルギー患者の死亡者数をゼロにすることを目標に、国の研究チームの代表研究者として取り組んでいることをご紹介いただきました。先生の、「患者の痛みに寄り添う」という姿勢に感銘を受けました。

さらに、遺伝子の塩基配列を高速で読む装置、次世代シークエンサーを実際に見せていただきました。

最後に、桐朋高校卒業で、再生医学研究部の教授である岡野ジェイムス洋尚先生の研究室を訪れました。研究室の施設見学の際、顕微鏡で培養されたiPS細胞を観察しました。

岡野先生からは、再生医学の現在と未来についてご説明いただきました。特に、パーキンソン病や心不全を例に、iPS細胞を元にした新たな治療法の開発に関するお話では、現在の医療の進歩と未来の可能性を実感することができました。さらに、遺伝子の異なる細胞を一つの体に合わせ持つ生物、キメラ動物に関連して、iPS細胞を用いて人の臓器を動物で製造するという、ショッキングな研究についても教えていただき、生命倫理の問題を深く考えさせられました。

参加した生徒の感想です。

・医学に元々興味があり、桐朋でのこうした催しに今まで参加したことがなかったので、最後の機会だと思って参加しました。あまり知らなかった基礎研究の分野の、自分がまったく知らない話ばかりを聞くことができ、好奇心を刺激され、こうした研究に興味を持てたし、視野が広がったようにも思います。お忙しい中、貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました。素敵な経験をすることができました。(高3)

・今回、さまざまなお話を聞いて、医療研究がどのように行われ、どのような試行錯誤や苦労を伴いながら、今日ある医療や、将来普及するであろう医療が確立していくのかを知ることができました。僕自身、将来は外科医になると決めていますが、今後、高齢化が進行する中で需要がいっそう高まる、高度かつ低価格の医療を供給していくために、研究者の方々の存在がきわめて重要になることを強く感じました。今回、このような素晴らしい機会を与えていただき、ありがとうございました。(高3)

・学年の先生から企画を紹介されて興味を持ち、参加しました。医療の現状、問題となっている点などを、実際に医療に従事されている方の視点を通してお話しいただき、大変勉強になりました。さらに、普段目にする機会のない基礎医学の研究に直接触れ、最新の医療の様子を知ることができたので、医学部の受験に臨む上でモチベーションがますます高まりました。(高3)

・同じ進路企画で、この夏に千葉大学理学部の研究室を訪問しました。自分が将来学びたいのが医学と理学に重なる分野で、どちらの方面に進むのか決めきれていないので、医学部の研究室を見て決めたいと思い、参加しました。実際の研究室や、研究している様子を見学することができ、そのうえで、先生方の現在の研究に関する講義も聴くことができました。最先端の研究に関するお話はなかなか聞くことができないし、将来学んでみたい分野のお話はとても興味深く、面白かったです。貴重で贅沢な機会を設けていただき、本当にありがとうございました。自分の将来について悩んでいたことのいくつかを、今回の経験で解決することができました。先生方のように、最先端の研究にいつか自分も携わってみたいという思いが強くなりました。(高2)

・将来、医療の道(今のところ臨床)へ進もうと考えているため、研究とはどういうものかを学べたり、刺激を受けたりできると思い、参加しました。実際に、実験用の動物からさまざまな研究機器、本物のiPS細胞まで見ることができました。事前に予想していた以上に、広く深く学ぶことができ、とても面白かったです。大変興味深く、また深く考えさせられる内容に触れ、これまで臨床しか考えていませんでしたが、研究にも大いに興味を持ちました。ありがとうございました。(高1)

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