桐朋中学校・高等学校

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40期卒業生対談「からだ」と「民主主義」

12
Dec
5

11月21日に進路部企画による対談『「からだ」と「民主主義」』が行われました。
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武蔵野美術大学身体文科研究室から矢田部英正さんと、東京大学社会科学研究所から宇野重規さんをお呼びしました。お二人とも著書が入試問題で多用されるなど大変著名な方で、本校40期の卒業生ということで講演を行って下さいました。

宇野さんのお話 【前半その1】
政治史、政治哲学がご専門の宇野さんは先に行われたアメリカ大統領選挙の話題について参加した生徒にぐいぐいと質問を問いかけました。
「大統領選の予測は果たして “大きく外れた” と言えるのか」
「クリントン候補に入るべきだった500万票はなぜ消えたのか」
候補者の優劣のみに目が行きがちであるところを、多数決の欠陥--すなわち3つ以上の選択肢があるときには多数決が機能しなくなることーーに焦点を当てて高校生にわかりやすく説明して下さいました。
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矢田部さんのお話 【前半その2】
続いての矢田部さんのお話は、肉体美・姿勢の美しさに関してのヨーロッパと東洋の考え方の違いでした。東洋由来の体の使い方を研究されている矢田部さんは、“体の自然に立ち返る”こと、すなわち文化に基づいた自然な体の動かし方、体の自然な姿勢の実現により、バランス感覚がよくなり、感覚が研ぎ澄まされ、ケガもしにくくなるとおっしゃいます。これはご自身が桐朋の体操部に所属していたときの経験にも基づくものであるそうです。
スライドでは、ギリシャ彫刻と仏像の違いに見られる西洋と東洋の理想の姿の違いは文化の違いに根差すものであると説明されました。
また、文化の違いの中で、
「日本人が魚のお頭をごちそうの象徴としてみる一方で、ヨーロッパの市場に並ぶ豚や牛の頭部に嫌悪感を抱くのはなぜか」
という問いには考えさせられるものがありました。それは、日本人と西洋人が「何によって生かされているか、何によって命をつないでもらっているかの違い」であると矢田部さんは語りました。
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「今の話、前半と後半がつながると思う人」
という問いかけから宇野さんと矢田部さんの対談がはじまりました。
ヨーロッパの古代ポリスではじまった民主主義(デモクラシー)の原型は地中海性気候の厳しい環境の中で人々が集団として生き延びるために生まれたのだとお二人は語ります。魚があまり獲れないエーゲ海、作物の育ちにくい乾燥した土地という、生きることに関して大きなストレスを感じる風土の中で、物資を奪われないようにするための自他を分ける城壁、集団の意思決定をしていく上で他者を納得させ、士気づけるスピーチがいかに重要なものであったか、市民を守る戦士がいかに崇拝の対象になりえたのか、西洋的な政治の原型と西洋的な美的理想がどのようにして出来上がっていったのか、両者が根底は文化に根差した同じ起源をもつということが、矢田部さん、宇野さんの掛け合いで紐解かれていきました。
一見関係ない2つの話題が絡みあってゆく様は参加者の予想の斜め上をゆくものであり、圧巻でした。
対談では、さらに日本の風土にあった“話し合い”とはどのようなものであるかにも及び、対談後は参加した高校生からお二人に鋭い質問もなされました。
参加した40名の高校1年生から高校3年生にとってはスリリングな知的刺激になったことと思います。
宇野さん、矢田部さん、貴重なお話をありがとうございました。
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参加した高校生の感想
体と民主主義という一見全く関係ないような変なテーマでちゃんと対談が成立するのかと疑問に思ったが、
実際対談を聞いてみると、西洋と東洋では、当然文明の発達の仕方が違い、それぞれで体と政治とが意外な面でつながっていたり地域の特色が表れていたりした。西洋のことは勿論、東洋の文化についても普段自分では思いつきもしない視点を矢田部さん宇野さんは持っていて、自分自身の見識も広がるような充実した機会だった。
(1年E組 木村俊太 君)

お二方とも自分の進路にはとても悩んでいたとおっしゃっていたというのがとても印象的でした。僕はちょうど今高校2年生で進路選択の時期ですが僕は周りが決まらない中で自分の中で「こういうことがしたい」という明確なものがあるため、逆に本当にこれでいいのか、他のことがやりたくなったらどうしようという不安もありました。しかし、そんな風になっても時間はあるからそこからやり直せばよい、とお二方を見て思えました。内容も非常に興味深くて面白かったです。
(2年A組 三上侑真 君)