vol01.地学「体感」が開く、サイエンスへの扉。 vol02.家庭科暮らしの手仕事に学ぶ

桐朋ism

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語る人 地学科 上原 先生

本格的な観測機器・施設へのこだわり

大学で天文学を専攻し、「暗黒星雲」をテーマに、日夜観測と研究に明け暮れていた私から見ても、桐朋では、天文ドーム(大口径反射望遠鏡)をはじめ、太陽観測所、プラネタリウムなど、生徒の学習体験のために、最新鋭の機材が投入されており、中学・高校生向けのレベルを超えてかなり本格的な環境を整えていると思います。

こうした自然科学分野の学習施設づくりに積極的な姿勢は、新校舎になってからのことではありません。従来の校舎でも建設当時の最先端をゆく設備・機材が導入されていました。ソフト面の質はもちろんですが、観測・実験機器や設備面でも生徒に本格的なものを提供することは、桐朋の伝統的なこだわりです。

生徒たちの実体験を豊かにする

東京に住んでいると、空は狭く、ぼんやりとしか星を見る機会がありません。本物に触れる体験が乏しいままで、地学の授業をやろうといっても、生徒全員が興味を持てるかどうかも疑問です。プラネタリウムや、天文ドーム等の観測施設は、バーチャルも含めつつ本物に触れて、実感を持ちながら学問的興味を持ち、理解を深めていくために欠かせない存在なのです。

また、昔なら当たり前だった小さな行為でも、経験のない子が多くなりました。わかりやすい例が、「マッチを擦ったことがない」こと 。そうした生徒たちに、ひとつずつ基本動作から教えています。私が桐朋に来た当初に驚いたことのひとつは、物理の授業で生徒たちに実験用のガスバーナーの分解を体験させ、構造を理解させていることでした。そんなところまで、というような細かい点もふくめて、生徒自身に失敗することも許容しながらやらせるのです。

海の話をする時には、世界各地の塩を用意してきて、実際になめてみることもあります。何事も表面的な知識でよしとせず、リアリティを持って本質を把握してもらいたい。

生徒の内面で「スイッチが入る瞬間」を待つ

ひとたびサイエンスの魅力に目覚めた生徒は、どんどん“その世界に夢中になって”力を伸ばしていきます。ある生徒の例ですが、高2の終わりまで運動部ひとすじで打ち込んでいたのに、何がきっかけだったのか「化学をやりたい」と突然言い出しました。それからは、桐朋での予習・復習を徹底的にやりこみ、そのまま東大の理系に現役合格。部活には熱心でしたが、学業成績がよいという印象の生徒ではなかったので驚きました。

勉強そのものは生徒本人が熱心に取り組めばよいことです。しかし、勉強へのあくなきモチベーション、学問に魅力を感じる感性は、「本物に出会い、体験し、実感する」ことでしか育ちません。「君たち、こんなに面白いものがあるんだぞ」と投げかけ、本物に出会うチャンスを増やし、生徒の内面で「スイッチが入る」確率をできるだけ高めるべく“仕掛け”ていくのが、桐朋のやり方です。

理系・文系の垣根にこだわらず大きく伸びて欲しい

大学で文系の学部に進学した人の中にも、星や宇宙に興味を持ち続けている人はいるものです。桐朋では、一人一人で異なる受験科目には選択科目で対応しつつも、ホームルームは卒業まで文系・理系が混合した形にし、現代文や英語、公民などの授業では、文系・理系の生徒が机を並べ、学んでいます。自分とは異なる分野の人とも交流し、互いに認め合うことで、学問的にも人間的にも大きく成長できると考えているからです。

専門家ほど、自分の専門分野を離れた事柄には「わからない」と切り分けてしまうものですが、桐朋の先生たちは博学で、「それはこういうことだよ」と教えてくれる。ジャンルを超えて学際的な知識を持つ先生がたくさんいます。理系に進んで社会で活躍しているOBは最先端の研究者から大学の先生、市長さん、変わったところでは役者まで、分野は幅広く多士済々です。「桐朋のアカデミズム」ともいうべきオールラウンドな学問の本質探究の気風は脈々と受け継がれています。

施設紹介

Detail
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プラネタリウム

2013年に完成した新しい教科教室棟にあるプラネタリウム。バーチャル体験とはいえ、星空を思う存分観賞できるチャンスだ。 上映が始まるとざわざわしていた生徒たちも瞬時に静かになる。
プラネタリウムをきっかけに「林間学校で星空を見る企画をしたい」という生徒も出てくる。

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プラネタリウムのプロジェクター

4K規格の高精度画像を投影する装置。星空、星座はもちろんのこと、太陽の軌道、地球のあらゆる経緯度の空を再現したり、赤外線や電波などの観測データを星空に重ねて投影したりと、臨場感豊かな視聴が体感できる。

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天文ドーム 反射望遠鏡

口径40cmの反射望遠鏡。太陽系の惑星はもちろんのこと、星団や星雲、銀河まで眺めることが出来る。季節毎に観望会を開催している。望遠鏡をのぞき込み、実際に本物の迫力を体感してもらいたい。冷却CCDも装備してあり、地学部や教員の研究にも活躍している。

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太陽観測所

毎日、地学部員が昼休みにおこなっている太陽観測用の望遠鏡。太陽を白い投影版に映し、それをスケッチしている。中学3年生や高校生の地学の授業でも訪れ、黒点の様子などを観察する。

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化石や鉱物などの展示スペース

岩石、鉱物、化石などを展示。地学に関係の深い模型やレゴのほか、屋上で計測している気象観測装置のモニターや、地球の天気と宇宙天気のモニターも設置されている。

PROFILE:理科 専任教員 上原 隼

長野県佐久穂町(旧八千穂村)出身。小学生の頃、地元にある野辺山宇宙電波観測所を見学。高校時代は文系だったが、大学は理系に進み、当時の体験もあり天文学の道を選ぶ。研究者として「暗黒星雲」をテーマに野辺山に通ったというキャリアを持つ。2009年に共著論文“Atlas and Catalog of Dark Clouds Based on Digitized Sky Survey I”で第13回欧文研究報告論文賞(日本天文学会)を受賞。桐朋では理科専任として主に地学と物理を担当。

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